ベトナム最大手の民間コングロマリットであるビングループ(Vingroup Joint Stock Company)は1月26日、電気自動車(EV)用充電インフラおよび電動二輪車を軸とした2つのカーボンクレジット創出プロジェクトについて、利害関係者との協議を開始した。
同社は充電網の整備だけで年間最大350万トンのCO2削減を見込んでおり、2029年までの本格展開を加速させる。これは、2025年後半の試験運用開始を控えたベトナム国内炭素市場の動きに先んじる、大規模な民間主導の取り組みとなる。
ビングループ傘下で充電インフラを担うヴィングリーン(V-Green Global Charging Station Development Joint Stock Company)が進めるプロジェクトは、国際的なカーボンクレジット認証機関であるベラ(Verra)のVCSに基づき登録される。
同社は2029年までに、約62万基の充電ポートを備えた約6,000箇所のEV充電ステーションを設置する計画を掲げた。2024年4月から開始されたこのプロジェクトは、化石燃料から排出係数の低い電力への転換を図るもので、充電器の耐用年数は10年から15年を想定している。
一方、電動二輪車に関するカーボンクレジット・プロジェクトは、別の認証機関であるゴールドスタンダード(Gold Standard)の「GS4GG」フレームワークの下で登録された。ビングループ傘下のEVメーカーであるヴィンファスト(VinFast Auto Ltd.)は、2025年にベトナム国内で前年比473%増となる計40万6,453台の電動バイクを販売し、国内シェア首位を固めている。同プロジェクトでは、車両の販売台数や走行距離、それに伴う排出削減データを収集・検証し、今後5年間にわたってカーボンクレジットを創出する。

ビングループは今回のプロジェクト推進にあわせ、地域的な充電ネットワーク拡大に向けた5億ドル(約750億円)規模のプライベートクレジット・ローンを含む、多額のグリーンファイナンスの確保に動いている。
ベトナム政府は2050年までのネットゼロ達成に向け、2029年までに炭素市場を正式に稼働させる方針を決定しており、今回のビングループによる先行事例は、国内の排出枠取引制度(ETS)における企業の標準モデルとなることが期待されている。

今回のビングループの動向は、単なる「EV販売」から「排出削減量の資産化」への明確なシフトを示している。注目すべきは、車両(ヴィンファスト)とインフラ(ヴィングリーン)の両面を自社グループで統制し、排出削減のバリューチェーンを完全に掌握している点だ。
通常、交通セクターの炭素クレジット創出は、データの透明性確保や小規模な排出源の集約が難しく、コスト高になりやすい。しかし、ビングループのように圧倒的なシェアを持つプレーヤーが充電網という「ハブ」でデータを一括管理すれば、クレジットの信頼性と創出効率は飛躍的に高まる。
これは、今後EV普及を急ぐ東南アジア諸国における公共交通の脱炭素化モデルにとっても、示唆に富む先行事例と言えるだろう。


