ネパールがLEAF連合と5,500万ドルの森林支援で合意 「相当調整」クレジットをアジアで初供給

村山 大翔

村山 大翔

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ネパール政府は1月23日、熱帯林保護を推進する国際的な官民連合であるリーフ連合(LEAF Coalition)との間で、最大5,500万ドル(約82億5,000万円)の成果連動型気候資金を受け取る合意に署名した。

アジア諸国として同連合と契約を締結するのはネパールが初めてとなる。

この合意により、ネパールは民間企業に対し、二重計上を防止する「相当調整(Corresponding Adjustments)」を適用したカーボンクレジットを世界で初めて提供し、国際的な法的規制市場での活用に道を開く。

今回の合意に基づき、ネパールは2022年から2026年にかけて、森林減少・劣化の抑制および森林回復によって実現される最大400万トンの排出削減・吸収量をカーボンクレジットとして発行する。クレジット価格は、用途に応じて1トンあたり10ドル(約1,500円)から25ドル(約3,750円)に設定された。

特筆すべきは、民間セクター向けクレジットの最大25%に「相当調整」が付与される点である。

これにより、シンガポールの炭素税制度や、国際民間航空機関(ICAO)が主導する国際航空炭素オフセット・削減スキーム(CORSIA)といった厳格な遵守市場(コンプライアンス市場)での利用が可能となる。

リーフ連合は、アマゾン(Amazon.com)やグーグル(Google)などの主要企業30社以上と、ノルウェー、英国、米国、韓国の政府が参画する世界規模のイニシアチブであり、非営利組織のエマージェント(Emergent)が事務局を務めている。

今回の契約では、英国とノルウェー政府が最初の100万トン分の購入を保証しており、その他のクレジットは民間企業に販売される。ネパールはすでに国土の46%を森林が占めており、2030年までに森林被覆率45%の維持、2050年までのネットゼロ達成を国家目標として掲げている。

合意によって得られる資金は、300万世帯以上に及ぶコミュニティ森林管理グループの支援や、生物多様性の保全、先住民の権利保護に向けた活動に厳格に充てられる。ネパール森林・環境省のゴビンダ・シャルマ秘書官は「アジア初のリーフ連合との合意は、我々が長年取り組んできたコミュニティ主導の森林管理の成果である。相当調整済みクレジットを提供できることを誇りに思う」と述べ、国際市場からの需要獲得に強い期待を示した。

また、エマージェントのエロン・ブルームガーデン最高経営責任者(CEO)は「ネパールとの提携は、先住民や地域コミュニティと協力して管理される健全な森林が、持続可能な収入源になり得ることを示している。高品質な管轄区域REDD+(JREDD+)クレジットが規制市場で活用される道が開かれた」と指摘した。

今後、ネパール政府は2026年にかけて地方自治体レベルで150回以上の対話集会を開催し、資金の公正な配分計画を策定する方針である。発行されるクレジットは、環境・社会的な完全性を保証する国際基準である「REDD+取引のためのアーキテクチャ(ART)」のTREES標準に基づく独立した検証を経て、順次市場に供給される見通しだ。

今回のネパールとLEAF連合の合意は、ボランタリーカーボンクレジット市場からコンプライアンス市場への橋渡しを象徴する歴史的な転換点となる。

特に「相当調整(CA)」済みクレジットを民間へ開放した点は極めて重要だ。

これまで森林由来のREDD+クレジットは二重計上のリスクや品質への懸念から価格が低迷してきたが、CORSIA等の規制市場に対応したことで、1トンあたり25ドルという高単価での取引が可能になった。

これは、日本企業にとっても、将来的な国内炭素税や国際規制への対応策として、高品質な森林クレジットの確保に向けた戦略を再考させる強力な先行事例となるだろう。

参考:https://emergentclimate.com/2401-2/