欧州委員会は2026年1月22日、炭素農業(カーボンファーミング)に伴う炭素除去および排出削減を認証するための手法案を公開し、4週間のパブリックコンサルテーションを開始した。
この取り組みは、2024年12月に施行された「欧州炭素除去・炭素農業(CRCF)規則」を具体化するものであり、農林業者が気候変動対策への貢献に応じて報酬を得るための共通枠組みを構築する狙いがある。
今回の認証手法案が対象とするのは、泥炭地の再湿潤化による修復、植林、アグロフォレストリー(森林農法)、および肥料使用の効率化を含む農地土壌管理の3領域である。
欧州委員会は、これらの活動を通じて農地や森林に蓄積された炭素を「成果連動型」の支払い対象とすることで、農林業者の新たな収益源を確保し、持続可能な生産体系への移行を加速させたい考えだ。
認証の質を担保するため、手法案では「定量化」「追加性」「貯蔵・監視・責任」「持続可能性」の4つの主要基準(QU.A.L.ITY)を規定している。具体的には、既存の慣行を超えた気候利益の証明や、貯蔵された炭素の継続的な監視、生物多様性への悪影響の防止などが厳格に求められる。また、2025年に採択された実施規則(EU 2025/2358)に基づき、認証スキームの運営に関する透明性とデータの信頼性確保も義務付けられた。
この手法案に対し、イタリアの企業からは「土壌分析だけでは5〜10年単位の炭素蓄積変化を正確に捉えるには不十分である」といった、測定精度に関する専門的な懸念も寄せられている。
欧州委員会は2026年2月5日に「炭素除去専門家グループ」の会合を開催し、寄せられたフィードバックを基に詳細な議論を行う予定である。
本規則の運用開始により、欧州におけるカーボンクレジット市場の透明性が飛躍的に高まることが予想される。
民間企業にとっては、グリーンウォッシングのリスクを回避しながら高品質な除去クレジットを調達する道が開かれる一方、農林業者には厳格なモニタリングコストの負担が課題として残る。欧州委が専門家の指摘を反映し、実効性と精度のバランスをどう調整するかが、今後の炭素除去市場の成長を左右する焦点となる。
今回の動きは、欧州が「炭素除去を単なるボランタリーな活動から、法に基づいた信頼性の高いビジネスモデルへ昇華させる」という強い意志の表れだ。特に泥炭地修復やアグロフォレストリーなど、これまで定量化が難しかった分野にメスを入れた点は大きい。
日本企業にとっても、欧州の基準は将来的なJ-クレジット制度の高度化や、国際的なサプライチェーンにおける炭素評価のベンチマークになる可能性が高いため、2月19日の公募締切後の動向は注視すべきである。


