佐賀県唐津市とみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は1月21日、自然資本の価値をクレジット化して地域経済に循環させる「唐津ネイチャーファイナンス研究会」を設立した。
同研究会には富士通や日本生命保険相互会社、ブルーカーボン事業を手掛けるBLUABLE(ブルーアブル)など官民学の多様な組織が参画する。2030年までの生物多様性回復を目指す「ネイチャーポジティブ」の世界的な潮流を汲み、森林から海洋までを統合した日本独自のクレジット制度確立を狙う。
背景には世界的な生物多様性クレジット市場の急拡大がある。
2022年の第15回生物多様性条約締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、民間資金を動員する手段としてクレジットの活用が明記された。英国では2024年から生物多様性ネットゲイン(BNG:Biodiversity Net Gain)が本格始動し、オーストラリアでも2025年からネイチャーリペアマーケット(Nature Repair Market)が運用されている。
国内でも環境省が2025年9月から将来的な導入を見据えた調査を本格化させており、今回の研究会はこれに呼応する実証事例となる。検証テーマの主軸は、森から海へとつながる流域全体の生態系サービスを統合的に評価し、保護活動をコストではなく経済成長のエンジンへと転換することにある。
富士通研究所は「海洋デジタルツイン」技術を用いて藻場の生態量や二酸化炭素(CO2)吸収量を迅速に可視化し、科学的なエビデンスに基づくクレジットの組成を支援する。
企業のサプライチェーンにおける自然関連リスク低減への貢献も重視される。参画するシンク・ネイチャーなどは、自然の価値を正当に評価するフレームワークの構築に注力する意向だ。みずほFGは、この「水がつなぐ世界」への取り組みを気候変動対策と経済成長を両立させる鍵と位置づけ、金融メカニズムを通じた支援を強化すると表明した。
今後は実証フィールドである唐津市の自然を活用し、年度内を目途に具体的なクレジット組成に向けた要件定義を加速させる方針である。
本件は、単なる地方創生の枠を超え、カーボンクレジットと生物多様性クレジットが融合する「ネイチャークレジット」の本格的な始動を象徴している。
特に注目すべきは、富士通のデジタルツインを用いたCO2吸収量の可視化だ。これはクレジット市場の積年の課題である「透明性と信頼性」を技術で担保しようとする試みであり、海洋大国である日本がブルーカーボン市場で主導権を握るための重要な布石となる。
2025年の環境省による制度調査を受け、2026年は日本独自のネイチャーファイナンスが「研究」から「実装」へとフェーズを変える転換点になるだろう。
参考:https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20260121release_jp.pdf


