インドネシアが「炭素市場拡大連合」へ正式加盟 高品質な森林クレジットの国際標準化を推進

村山 大翔

村山 大翔

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インドネシア森林省は1月20日、高品質なカーボンクレジット市場の拡大を目指す政府主導の枠組み「炭素市場拡大連合(The Coalition to Grow Carbon Markets)」への加盟をロンドンで発表した。

プラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)大統領と英国のキア・スターマー(Keir Starmer)首相による首脳会談を受けた動きであり、世界第3位の熱帯雨林を有する同国の参画により、自然に根ざした解決策(NbS)への民間資金流入を世界規模で加速させる狙いがある。

今回の加盟により、同連合の加盟国は11カ国となった。

英国、シンガポール、ケニアが共同議長国を務め、カナダ、フランス、パナマ、ペルー、スイス、ニュージーランド、ザンビアが名を連ねる。連合の活動の柱となるのは、ブラジルで開催されたCOP30で発表された「高品質なカーボンクレジット利用のための共通原則(Shared Principles for Growing High-Integrity Use of Carbon Credits)」だ。

この原則は、企業がクレジットを利用する際の環境的・社会的整合性の基準を標準化するもので、政策の断片化を嫌う投資家に対し、明確な投資判断基準と信頼を提供することを目的としている。

インドネシアは、広大な熱帯雨林に加えて、マングローブ生態系や熱帯泥炭地など、世界有数の炭素貯蔵ポテンシャルを保有している。インドネシアのラジャ・ジュリ・アントニ(Raja Juli Antoni)森林相は、「インドネシアの森林セクターを代表して連合に参加できることを嬉しく思う。志を同じくするパートナーと協力し、排出削減と自然保護、そして持続可能な開発を支える信頼性の高いクレジットへの需要を喚起していく」と述べ、NbS分野での主導権確保に意欲を示した。

また、同連合の事務局を支援するスタンダードチャータード(Standard Chartered)インドネシアのドニー・ドノセプトロ(Donny Donosepoetro)最高経営責任者(CEO)は、「インドネシアの参画は、市場の透明性と品質基準の向上、そして需要拡大に大きく寄与するだろう」と指摘し、金融機関としての立場から同国の役割を高く評価した。

炭素市場拡大連合は今後、共通原則に沿った地域・国家レベルの政策立案を支援し、バイヤーや投資家ネットワークとの対話を通じて、継続的なクレジット需要の創出に注力する。

背景には、世界的な気候変動目標の達成には、民間セクターからの資金供給が不可欠であるという危機感がある。気候変動に向けた英国特使のレイチェル・カイト(Rachel Kyte)氏は、「カーボン市場は、国の気候目標達成と、自然保護・強靭性構築のための投資収益を確保する上で極めて重要な役割を果たす」と述べ、民間資金を高品質なプロジェクトへ誘導する重要性を強調した。

インドネシアの参画は、これまでの「量」を重視した初期市場から、国際的な整合性と「質」を重視する成熟した市場への移行を象徴する動きとして注目される。

東南アジアの「カーボンハブ」としての地殻変動

今回のインドネシアの加盟は、日本の事業者にとっても見逃せない大きな変化だ。

特に注目すべきは、共同議長国にシンガポールが含まれている点である。シンガポールはアジアにおけるカーボンクレジットの取引・金融ハブを目指しており、隣国インドネシアの膨大な森林資源が国際標準の「高品質なクレジット」として流通し始めることは、アジア圏の市場流動性を一気に高める可能性がある。

これまでインドネシアは、自国の排出削減目標(NDC)達成を優先するため、クレジットの国外移転に慎重な姿勢を見せてきた。しかし、今回のような国際的な枠組みへの参画は、透明性の高いルール下での外資受け入れに舵を切った証左といえる。

日本企業にとっては、J-クレジットや二国間クレジット制度(JCM)以外の選択肢として、NbS由来の高品質なボランタリークレジットを調達・投資する際の、より安全で標準化されたルートが整備されつつあると捉えるべきだろう。

参考:https://coalitiontogrowcarbonmarkets.org/indonesia-joins-the-coalition-to-advance-international-climate-finance-for-nature-based-solutions/