仏建設大手のVINCIが豪クライメートテックと提携 「分散型CCUS」のグローバル展開を加速

村山 大翔

村山 大翔

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フランスのインフラ建設大手ヴァンシ・グループ(VINCI Group)は1月22日、オーストラリアのスタートアップ企業であるキャプチャー(Kapture)と戦略的提携を締結したと発表した。

本提携は、ヴァンシ傘下のイノベーション・投資プラットフォームであるレオナール(Leonard)を通じて行われ、キャプチャーが開発したモジュール型炭素回収技術の商業化と国際的な展開を加速させる。

両社は、これまで対策が困難とされてきた「ハード・トゥ・アベート」セクターへの分散型炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)の導入を推進し、2026年第2四半期にはヴァンシの事業拠点において最初の商業導入を開始する予定である。

キャプチャーが提供する技術は、ディーゼルおよびバイオディーゼル発電機の排気口に後付け可能な小型のハードウェアを用いて、排出されるCO2を回収するものである。実証実験では45%の回収率を達成しており、次段階では70%以上の回収を目指している。回収されたCO2は、非毒性の溶剤で処理された後、コンクリート製造の充填剤として利用される。これにより、炭素を半永久的に隔離すると同時に、建設資材の強度を高めるというサーキュラー・エコノミーの実現に寄与する。

ヴァンシのピエール・アンジョラス最高経営責任者(CEO)は、今回の提携について、産業界の脱炭素化を加速させるためのスタートアップとの連携の重要性を強調した。ヴァンシは2026年の戦略的焦点として、ハードウェアベースの気候変動対策ソリューションの規模拡大を掲げている。世界120カ国以上で28万5,000人の従業員を抱え、エネルギーソリューションや建設、空港運営などの広範な事業ポートフォリオを持つ同グループにとって、キャプチャーの技術は既存のインフラ設備における排出削減の強力な手段となる。

今回の提携は、キャプチャーにとって大きな転換点となる。

メルボルンを拠点とする同社は、ヴァンシが持つ膨大なプロジェクトのパイプラインや産業的専門知識、そして世界規模の展開能力を活用することで、パイロット段階からフルスケールの商業展開までの期間を大幅に短縮することが可能となる。モジュール型の炭素回収システムは、従来の大型設備に比べて導入の複雑さや資本コストを抑えられるため、世界中に分散する産業拠点での迅速な採用が期待されている。

一方、ヴァンシ傘下のヴァンシ・エアポート(VINCI Airports)が発表した2025年12月期の実績によると、同社が運営するネットワークの年間旅客数は、前年比5%増の延べ3億3,400万人を超え、過去最高の水準を記録した。

同社は2050年までに自社のScope1,2でネットゼロを達成するという目標を掲げており、空港施設内での分散型電源へのCCUS導入などは、この目標達成に向けた重要なステップとなる。

日本市場においても、ヴァンシは関西国際空港などの運営に深く関与しており、今回の提携を通じた技術的知見が国内の空港インフラの脱炭素化に影響を与える可能性がある。

今後、両社は初期プロジェクトの成果を踏まえ、さらなる顧客や地域への技術供与を共同で進める計画である。2026年中には、初号機の稼働状況に基づく具体的な排出削減データが公開される見通しとなっている。

今回の提携は、単なる「スタートアップへの投資」を超え、世界最大の建設・インフラ企業が「分散型CCUS」を自社のインフラ網に組み込むという極めて現実的な脱炭素戦略である。

注目すべきは、回収したCO2をコンクリートに封じ込める手法だ。

これは、高価な輸送インフラを必要とする大規模CCSとは対照的に、オンサイトで完結する「地域密着型」の炭素除去モデルを提示している。

日本国内に目を向けると、ヴァンシは関西エアポートの筆頭株主として、関西三空港の運営を担っている。2025年の大阪・関西万博を経て、日本の空港インフラも「グリーン化」の真価を問われるフェーズに入った。

今回のようなディーゼル発電機後付け型のモジュール技術は、日本の建設現場や地方空港、離島の発電施設など、大規模な設備投資が難しい環境において、極めて高い親和性を持つだろう。

今後は、この技術によって生成される「コンクリート由来のカーボンクレジット」が、日本のJ-クレジット制度や国際的なボランタリークレジット市場でどのように評価されるかが、次なる焦点となるだろう。

参考:https://www.vinci.com/en/newsroom/press-releases/vinci-airports-traffic-december-31-2025