「10万トンのカーボンクレジットを先買」 カナダの脱炭素ファンドが米泥炭地再生に出資

村山 大翔

村山 大翔

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カナダの脱炭素化投資ファンドであるインランシス・ファンド(The Inlandsis Fund)は2026年1月21日、米国パンテオン・リジェネレーション(Pantheon Regeneration PBC)が手掛ける泥炭地再生プロジェクトから10万トンのCDRクレジットを先行購入する契約を締結した。

この資金供給は、米国初の商業規模の泥炭地再生事業である「ポコシン生態系保護区 I(Pocosin Ecological Reserve I)」の建設と開発を直接支援するものである。自然由来の炭素除去手法(NbS)の中でも特に貯留効率の高い泥炭地に特化することで、高品質なカーボンクレジットの安定供給を目指す。

今回の契約により、パンテオン・リジェネレーションは初となる自然ベースのCDRプロジェクトの本格的な稼働に向けた資金を確保した。同社は劣化した景観の修復を専門とするスタートアップであり、今回のプロジェクトにはカナダのフォンダクション・アセット・マネジメント(Fondaction Asset Management (FAM))が管理するインランシス・ファンドが触媒的な役割を果たしている。

泥炭地は地球上で最も炭素密度の高い生態系の一つとされ、1ヘクタールあたりの炭素貯留量は森林と草原の合計を上回る

放置され劣化が進んだ泥炭地は膨大な温室効果ガス(GHG)の排出源となるが、これを再生することで長期的な二酸化炭素(CO2)吸収源として機能させることが可能となる。副次的な効果として、地域の生物多様性の向上や水質改善、野生火災のリスク低減も期待されている

パンテオン・リジェネレーションは、デューク大学の湿地・海岸センターおよび最高科学責任者のカーティス・リチャードソン博士と共同で、泥炭地再生による炭素除去量と生態学的利益の定量化に取り組んでいる。科学的根拠に基づいたこのモデルにより、永続性の高い気候変動対策としてのクレジット創出が可能になる。

インランシス・ファンドのマネージング・ディレクターであるデビッド・モファット氏は「複雑な自然システムを、投資可能な高品質の気候インフラへと転換するという共通のビジョンをパンテオンと共有している」と述べ、同社の取り組みを支援する意義を強調した。

パンテオン・リジェネレーションの最高経営責任者(CEO)であるトリップ・ウォール氏は「インランシス・ファンドとの提携は、最高品質のNbSプロジェクトを市場に届けるという我々のミッションにとって極めて重要だ」と指摘した。同社にはこれまでに、アクサ・アイエム・オルツ(AXA IM Alts)やマイクロソフト気候イノベーション・ファンド(Microsoft’s Climate Innovation Fund)などの有力な機関投資家も出資を表明している。

今後は、2026年以降のクレジット発行に向けた法的手続きと現場での修復作業が加速する見通しである。

今回の先買契約は、リスクの高い初期段階のプロジェクトに資金を供給する「触媒的資本」として、今後の自然ベースCDR市場における投資モデルの先行事例となることが予想される。

泥炭地CDRが示す「高品質クレジット」の新基準

泥炭地は森林よりも炭素貯留密度が高く、単位面積あたりの気候変動対策効果が極めて大きい。しかし、その定量化や管理の難しさから、商業化には高いハードルがあった。

注目すべきは、マイクロソフト(Microsoft)やアクサ(AXA)といった、クレジットの「質」に対して最も厳しい基準を持つプレイヤーが既に名を連ねている点だ。これは、科学的な裏付け(デューク大学との連携)が投資判断の決定打となっていることを示唆している。日

本企業にとっても、単なる「植林」を超えた、泥炭地やブルーカーボンといった高度なNbSへの関与が、国際的な評価を得るための必須条件となりつつある。

参考:https://fondsinlandsis.com/pantheon-regeneration-announces-catalytic-pre-purchase/