米クライメートテックAvnosが提唱する「水生成型DAC」の戦略的価値 AIデータセンターがCO2除去の主戦場に

村山 大翔

村山 大翔

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米クライメートテックのアブノス(Avnos)は2026年1月20日、大気直接回収(DAC)市場の2026年展望を発表し、AIデータセンターの急増を背景とした「ハイブリッド型大気直接回収(HDAC)」への需要がかつてないほど高まると予測した。

同社は、CO2回収と同時に真水を生成する独自のHDAC技術を軸に、莫大な電力と水資源を消費するデータセンター業界の脱炭素ニーズを取り込む戦略だ。背景には、米国のデータセンター電力が2035年までに106ギガワットに達し、水消費量も年間18億ガロン(約680万立方メートル)に及ぶという深刻な資源制約がある。

アブノスのCEOであるウィル・カイン(Will Kain)氏は、「AIインフラの拡大スピードは従来のシステムでは対応できないレベルに達している」と指摘した上で、「データセンターにはエネルギー消費を抑え、水の回復力を強化しつつ、既存インフラに統合できる技術が必要だ」と述べた。

同社のHDAC技術は、データセンターから排出される低温の廃熱を利用することで、従来の熱依存型DACと比較して総エネルギー消費量を50%以上削減できる点が特徴だ。水分スイング再生と大気水分抽出を組み合わせることで、冷却用の真水を供給しながら高純度のCO2を回収する。これにより、事業者は炭素除去クレジットの創出と、データセンター運営における水リスクの低減を同時に達成できる。

アブノスは現在、総額1億ドル(約150億円)以上の公的・民間資金を確保している

出資者にはシェル(Shell)や三菱商事、ネクステラ・エナジー・リソーシズ(NextEra Energy Resources)などのグローバル企業が名を連ねる。2026年末には、シェルと三菱商事から1,700万ドル(約25億円)の融資を受けた初の商用規模施設「プロジェクト・シダー(Project Cedar)」の稼働を予定している。

関連記事:Avnos、「水を生むDAC」実証へ シェルと三菱商事が約25億円を出資 米国でハイブリッド型DAC施設建設へ

また、2026年初頭には米国海軍研究局(ONR)と提携した実証拠点「プロジェクト・ブライトン(Project Brighton)」がニュージャージー州でオープンする。カリフォルニア州ベーカーズフィールドで稼働中の「プロジェクト・アルパイン(Project Alpine)」も、米国エネルギー省(DOE)の支援を受けて次世代設計の最適化を継続する方針だ。

ラシーン・キャピタル・マネジメント(Rusheen Capital Management)のマネージング・パートナーであるジム・マクダーモット(Jim McDermott)氏は、「水消費が重要であるというアブノスの当初の仮説が、世界で最も急成長しているインフラ市場であるAI・データセンター業界に響いている」と評価した。

アブノスは、データセンターだけでなく、燃料製造や産業ハブへの展開も視野に入れている。2026年は、技術検証から商用展開への移行が本格化する重要な1年となる見通しだ。

今回のニュースは、単なる「効率の良いDAC技術の登場」という点にとどまらない。

注目すべきは、データセンターの資源確保という事業継続性に直結するソリューションへと変質した「線」の動きだ。

昨今のビッグテックはウォーター・ポジティブ(消費以上の水を還元する)を目標に掲げているが、AIの計算負荷増大によりその達成は困難を極めている。

アブノスの戦略は、カーボンクレジットという金融価値に、冷却水という実物資産をセットにすることで、データセンター事業者の投資判断を容易にしている。

今後、日本国内においても、廃熱利用や水資源の制約が厳しい地域でのDAC展開において、この「多目的型インフラ」という視点は極めて重要なモデルになるだろう。

参考:https://www.avnos.com/news/avnos-predicts-strong-2026-hybrid-dac-demand-driven-by-ai-data-centers-and-industrial-decarbonization/