カナダ政府は8月18日、オタワのクライメートテック企業、テラフィクシング(TerraFixing)に対し、寒冷地対応の直接空気回収(DAC)技術開発を目的に250万カナダドル(約2億5,000万円)の資金を支援すると発表した。発表はエネルギー・天然資源省のティム・ホジソン大臣を代表して、ヤシル・ナクビ下院議員が行った。
テラフィクシングは、寒冷地でも効率よく稼働するDAC装置を開発しており、まずは年間1,000トンのCO2を除去できるシステムを作る計画だ。今回の資金は、コンテナ型のDAC装置に充てられる。この装置はゼオライトという素材を使い、空気中から効率的にCO2を吸着できる仕組みを採用している。
この支援は、カナダ政府の二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)研究開発プログラムの一環で、性能向上とコスト削減を目指す技術を対象にしている。テラフィクシングは資金を活用し、研究施設の建設や知的財産の開発を進め、商用化に向けた生産ラインの準備を始める。
同社はすでに、2024年に北部ケベック州で1,000万カナダドル(約10億円)の商用契約を結んでおり、銀行や財団に向けてカーボンクレジットの事前販売も実施している。今後はカナダ国内で雇用を増やし、米国に頼らない供給体制をつくることも目標としている。
創業者でCEOのショーン・ウィルソン博士は「北極圏の寒さや風はDACに最適であり、再生可能エネルギーや地域社会との連携を広げる拠点になる」と語った。
同社によると、大規模に展開すればCO₂除去コストを1トンあたり100米ドル(約1万4,700円)以下に抑えられる見通しで、これは世界的に目指されている水準だ。
カーボンリムーバル・カナダの共同創設者ナイーム・マーチャント氏も「TerraFixingの取り組みは、カナダを炭素除去のリーダーに押し上げる可能性がある」と評価している。
テラフィクシングは2026年以降の本格商用化を目指し、極北地域でのDAC拠点づくりを加速する方針だ。