シャープは、家庭用太陽光発電の自家消費によって生じた二酸化炭素(CO2)排出削減量を集約し、国のJ-クレジット制度において5,236t-CO2の認証を取得した。
これは同社が展開する「COCORO ENERGY(ココロエナジー)エコ会員」サービスを通じた初のカーボンクレジット創出となる。

2022年11月1日から2024年6月30日までの期間に会員の自宅で削減された排出量を、同社がアグリゲーターとして取りまとめ、第66回認証委員会にて正式に承認された。
今回のクレジット創出の核となるのは、住宅用太陽光発電システムを活用するユーザーが発電した電力を自ら消費することで生まれる「環境価値」だ。従来、個々の家庭における排出削減量は極めて微量であり、クレジット化に伴う事務手続きやコストの負担から、市場に流通させることは困難とされていた。シャープはAIを活用したHEMS(住宅向けエネルギー管理システム)を通じて数千世帯規模のデータを統合することで、この課題を解決した。
エコ会員への参加特典として、同社は「モニタリング基本機能」や「蓄電池あんしん運転」など、月額220円(税込)で提供している3つの有償サービスを8年間無償で提供する。ユーザーにとっては、日常の省エネ行動が直接的なサービス還元に繋がるメリットがある。一方、シャープは会員から譲渡された環境価値をクレジット化し、脱炭素経営やカーボンオフセットを推進する企業へ売却する。
J-クレジット制度は、省エネ設備の導入や森林管理による排出削減・吸収量を国が認証する仕組みである。創出されたクレジットは、温室効果ガス(GHG)排出量算定・報告公表制度や、国際的なイニシアチブであるRE100(などの報告に活用できる。シャープは今後、創出したクレジットの売却益を、さらなる環境貢献機能やサービスの開発資金に充当する方針だ。
同社は、住宅セクターにおける分散型電源の活用を加速させることで、2050年のカーボンニュートラル実現に寄与するとしている。次期認証期間に向けた削減量の集計も進めており、さらなるクレジット供給量の拡大が期待される。
今回の発表は、単なる「一企業の環境貢献」を超え、日本のカーボンクレジット市場における供給源の多様化を示す重要な一歩である。
これまでJ-クレジットの供給は、大規模な工場設備や森林を保有する組織が中心であった。しかし、シャープのような家電大手が「アグリゲーター」として機能することで、家庭という無数の小さな削減ポイントを巨大な供給源へと変貌させた。
現在、国内の再エネ由来J-クレジットは、企業のScope2削減ニーズの高まりを受けて供給不足が続いており、価格も上昇傾向にある。シャープが5,000トンを超える規模を安定的に供給できる体制を整えたことは、市場の流動性向上に寄与するだろう。
今後は、このような「会員基盤×デジタル集約」モデルが他の家電・住宅設備メーカーにも波及し、日本の住宅セクターがカーボン・クレジット市場の主要なプレイヤーになる可能性が高い。


