セルビアが「地中CO2貯留」の法整備へ 枯渇した油ガス田の活用を容認

村山 大翔

村山 大翔

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セルビア共和国の鉱業・エネルギー省は1月15日、炭化水素部門の近代化と脱炭素化を目的とした新たな法律案の策定を開始した。

この法案は、国内の枯渇した油田およびガス田の地質構造に二酸化炭素(CO2)を永久に貯留することを明示的に認めるものである。同国は1月18日までを期限に、業界関係者や専門家から意見を募るパブリックコメントを実施している。

新法案は、従来の採掘枠組みにおいて炭化水素を単なる「鉱物エネルギー資源」と定義していた規定を刷新する。探査、生産、輸送に加え、地下構造を天然ガス貯蔵およびCO2の長期的な地中貯留に利用するための、統合的な法的・制度的体系の構築を目指す。

同省によれば、この枠組みは欧州連合(EU)の炭素捕獲・貯留(CCS)指令(Carbon Capture and Storage Directive)に準拠するように設計されている。炭化水素ライセンス、オフショアの安全性、そしてCO2の地質学的貯留に関する規制をEU基準に合わせる狙いがある。

パブリックコメントのプロセスでは、産業界の参加者、学術機関、市民団体、個別の専門家からの提出を受け付けている。ステークホルダーは法律の原則と適用範囲について、短期間でのフィードバックを求められた。

EU全体では、産業部門の脱炭素化に向けてCCS技術の規模拡大を模索しており、地中貯留への注目が再燃している。内陸国であるセルビアにとって、同様の地理的制約を持つオーストリアの事例が比較対象となる。オーストリアは現在、大規模なCO2貯留を制限しているが、気候戦略の一環として地下のポテンシャル調査や国境を越えた輸送の検討を加速させている。

セルビア政府は、EUの気候目標が厳格化し長期的な炭素管理ソリューションへの需要が高まる中で、国内の貯留ルールの確立と地域協力のバランスを今後数カ月で精査する方針だ。

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セルビアがCCSの法整備に踏み切ったことは、単なる国内の環境規制の更新に留まらず、東欧におけるカーボンクレジット市場の基盤作りを意味している。

特に「枯渇した油ガス田」の活用を明文化した点は、既存のインフラ転用によるコスト低減と、貯留の永続性を担保する上での重要な一歩だ。これは将来的に、欧州域内での「貯留ベースの高品質なカーボンクレジット」の発行主体となる可能性を示唆している。

内陸国であるセルビアが、周辺のEU諸国と連携してCCSのハブを構築できるかどうかが、同国の産業競争力を左右する鍵となるだろう。

参考:https://ekonsultacije.gov.rs/topicOfDiscussionPage/597/3