スペイン・バルセロナに本拠を置くカーボンクレジット認証機関のプラネットAIネイチャー・スペース(PNS:PlanetAI Nature Space)は1月14日、2023年の設立からわずか3年足らずで累計1億3,300万トンを超えるカーボンクレジットを発行し、欧州連合(EU)域内における発行量シェアで首位に立ったと発表した。
同機関は量子機械学習や衛星データを活用した高度なモニタリング技術を強みとしており、透明性の欠如が課題となっていたボランタリーカーボンクレジット市場において、科学的根拠に基づく新たな国際標準としての地位を固めている。
PNSが提供する認証プラットフォームの核心は、人工知能(AI)と衛星による地球観測(EO)、そして量子機械学習を統合した独自の環境モデリング技術にある。この技術を用いることで、森林や海洋などの生態系における炭素蓄積量を極めて高い精度で算出することが可能となった。特筆すべきは、過去の衛星データを解析することで、過去に吸収・固定された炭素量を遡って定量化しヴィンテージクレジットとして発行できる点であり、これがプロジェクト開発者にとっての大きなインセンティブとなっている。
現在、同機関は森林炭素、ブルーカーボン(マングローブ・海洋)、パーム炭素、メタン削減の4つの主要な手法(メソドロジー)を運用している。これに加え、EU森林破壊防止規則(EUDR)に準拠した「生物多様性シール」を発行しており、企業のサプライチェーン管理とCDRを統合的に評価する仕組みを構築した。さらに現在は、新規植林・再植林・植生回復(ARR)および農地土壌を炭素貯蔵庫として活用する新たな手法の開発も進めている。
プロジェクト開発者の参入障壁を低減する独自の財務モデルも、急速な普及を後押ししている。PNSは、クレジットが実際に売却されるまで発行手数料を徴収しない「成功報酬型」のモデルを採用した。開発者は初期の登録費用のみを負担すればよく、コロンビアのアマゾンで進行中の350万ヘクタール規模の巨大プロジェクトなど、大規模な環境保全事業の資金調達を容易にしている。創出されたクレジットはブロックチェーン技術によってライフサイクル全体が追跡され、二重計上の防止と完全な透明性が保証される。
国際的な評価も高まっており、PNSはUNFCCCの技術メカニズムである気候技術センター・ネットワーク(CTCN)のメンバーに選出された。また、地下水を検知するクォンタム・アクア技術は、世界経済フォーラム(WEF)からトップ・イノベーターとしての表彰を受けている。同機関は今後、先住民が持つ伝統的な知識を保全手法に組み込む取り組みをさらに強化し、科学と地域社会の融和を図る方針を掲げている。
PNSの躍進は、カーボンクレジット市場が「自称の削減」から「科学的に証明された除去」へと完全に移行したことを象徴している。
特に量子機械学習を用いた過去データの解析によるヴィンテージ・クレジットの創出は、これまで正当に評価されてこなかった長期的な保全活動に光を当てるものであり、日本の森林保全クレジットの高度化においても示唆に富む。
また、売却まで手数料を取らないビジネスモデルは、資金力に乏しい開発者が多いCDRスタートアップにとって強力な支援策となる。
今後はEUDR対応の生物多様性認証が、欧州市場への輸出を狙う日本企業にとっても事実上の必須要件となる可能性が高く、同機関の動向からは目が離せない。


