カタールに拠点を置くカーボンクレジット基準機関のグローバル・カーボン・カウンシル(Global Carbon Council:GCC)と政府間組織のアジア森林協力機構(Asian Forest Cooperation Organization:AFoCO)は1月15日までに、アジア全域での自然由来解決策(NbS)の拡大に向けた戦略的提携を締結した。
この提携は、年間2,160億ドル(約33兆2,640億円)に上る森林金融の不足を解消し、民間セクターの投資を促進することを目的としている。パリ協定第6条に基づく高完全性な炭素市場の構築を目指し、両組織は共同作業部会を設置して具体的なプロジェクトの選定に着手する。
国連環境計画(UNEP)の報告書によれば、世界の森林投資は2023年の840億ドル(約12兆9,360億円)から、2030年までに年間3,000億ドル(約46兆2,000億円)へと3倍以上に引き上げる必要がある。現在、年間2,160億ドルという巨額の資金ギャップが障壁となっており、信頼性の高い市場ベースの解決策が急務となっている。今回の合意は、アジア全域で検証可能かつ影響力のある森林・気候イニシアチブを支援する協力枠組みを構築するものである。
提携の柱となるのは、デジタルによる測定・報告・検証(dMRV)システムの活用だ。
これにより、プロジェクトの透明性と信頼性を国際基準に沿って確保する。AFoCO加盟国に対しては、持続可能な林業プロジェクトの開発や炭素クレジットによるインセンティブ活用のための技術支援と能力構築が行われる。特に、陸域森林やマングローブ、泥炭地などの生態系保全と修復に重点を置く。
GCCは、国際民間航空機関(ICAO)が定める国際航空カーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)の下で、グローバルサウス初の国際認定を受けた炭素市場プログラムである。一方のAFoCOは、アジアの気候レジリエンスを推進する政府間組織であり、高度な林業政策を現地の修復活動へとつなげる役割を担っている。
両組織は官民連携に基づき、土地利用・土地利用変化および林業(LULUCF)分野での協力を強化する。
GCCの創設会長兼最高経営責任者(CEO)であるユセフ・アル・ホル氏は「アジアの森林は毎年約10億トンのCO2を吸収しており、地球上で最も生産的な吸収源の一つだ」と述べた。続けて、技術的専門知識と炭素市場の枠組みを統合することで、人間と地球の両方に利益をもたらす測定可能な成果を出すと強調した。
AFoCOの事務局長であるチョンホ・パク氏は「GCCとの協力により、加盟国が持続可能な林業プロジェクトを体系的に拡大するために必要なツールや知識を提供する能力が強化される」と指摘した。その上で、コミュニティや生態系、気候に対して長期的にポジティブな影響を創出することを目指すと述べた。
今後は共同作業部会を通じて、優先的なイニシアチブの特定や技術支援の調整を進める予定である。ワークショップや知見の交換を通じて、アジアの自然由来解決策プロジェクトを国際的な気候枠組みへと統合し、高品質な炭素市場へのアクセスを拡大していく。
今回の提携は、アジアにおけるカーボンクレジットの「質の担保」と「資金流入」の両面を解決しようとする野心的な動きである。これまでアジアの森林プロジェクトは、透明性や算定基準の不透明さが民間投資を阻む一因となっていたが、CORSIA認定を持つGCCがデジタルMRVを導入することで、クレジットの信頼性が飛躍的に高まる可能性がある。
日本企業にとっても、二国間クレジット(JCM)以外の選択肢として、アジア発の高完全性な森林クレジットが市場に供給されることは、ネットゼロ達成に向けたポートフォリオ構築において重要な転換点となるだろう。


