パプアニューギニアで世界初 改良かまど事業がヴェラ新基準でクレジット発行

村山 大翔

村山 大翔

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オーストラリアのタスマン・エンバイロメンタル・マーケッツ(TEM)は8月15日、パプアニューギニア南部高地で進めている改良型かまどの普及事業が、国際認証機関Verraの新しい基準「VM0050」に基づき、世界で初めてカーボンクレジットの発行を認められたと発表した。

この「VM0050」は2024年10月に導入された手法で、調理用かまどに関するエネルギー効率改善や燃料転換のプロジェクトに新たな基準を設けたものだ。さらに、ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)の「コア・カーボン原則(CCP)」に準拠しており、信頼性の高い事業として評価されている。

TEMのミカエラ・モリスCEOは「強固な基準の下で世界初の承認を得られたことは、炭素市場における当社のリーダーシップを示すものだ」とコメントした。

この事業は「ヘルシア・ホームズ、ヘルシア・フォレスト」と名付けられ、現地の家庭に改良型かまどを無償で配布している。従来の屋内での薪火調理に比べ、燃料の消費を減らし、森林伐採の抑制と室内の空気汚染の改善につながる。さらに薪集めの負担が軽くなることで、女性の時間活用や経済活動への参加拡大といった社会的効果も見込まれている。

パプアニューギニアでは、いまも8割以上の家庭が伝統的な屋内かまどを使っており、健康被害や森林資源の減少が大きな問題となっている。TEMのプロジェクトはこれらの課題を同時に解決し、今後10年間で約300万トンのCO2排出を抑制できると見込まれている。

TEMは現地スタッフが直接事業を実施しており、外部委託に頼らない運営も特徴だ。PNGの気候変動・開発庁(CCDA)や地方政府とも協力し、地域コミュニティと密接に連携している。

今後は2026年までに5万世帯へ20万台の改良型かまどを配布する計画を掲げており、これはパプアニューギニアの国別削減目標(NDC)の達成に向けた重要な一歩となる。

モリス氏は「この事業は炭素金融が遠隔地の生活を改善できることを示す好例だ。環境だけでなく、地域社会にも恩恵をもたらす」と強調した。

今回の承認は、コミュニティに根ざした炭素削減プロジェクトが国際基準に沿って実現可能であることを示すものであり、今後のクックストーブ事業拡大に弾みをつけるとみられる。

参考:https://www.tasmanenvironmental.com.au/news/world-first-tems-project-verra-approved-vm0050-method/