米最高裁がアイオワ州2郡の上訴を棄却 「CO2パイプライン」地方規制の権限認めず

村山 大翔

村山 大翔

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2026年1月12日、米連邦最高裁判所は、アイオワ州の2つの郡が求めていた二酸化炭素(CO2)輸送パイプライン建設に対する地方規制の適用を巡る上訴を棄却した。

最高裁はコメントを出さずに上訴を退けており、これにより「連邦法および州法が地方自治体の独自規制に優先する」とした下級審の判決が確定した。今回の決定は、大規模な二酸化炭素回収・貯留(CCS)インフラの整備を目指すサミット・カーボン・ソリューションズ(Summit Carbon Solutions)にとって、法的な障壁を取り除く重要な進展となる。

本件の焦点となったのは、サミットが計画している複数州にまたがるCO2パイプライン網だ。

このプロジェクトは、エタノール工場や肥料施設から排出されるCO2を回収し、アイオワ州内の約700マイル(約1,127キロメートル)を含むネットワークを通じて輸送、最終的に地中の地質貯留層へ永久隔離することを目的としている。

アイオワ州のシェルビー郡とストーリー郡は2022年10月、公共の安全と健康を守ることを理由に、居住区や学校などの施設から一定の離隔距離(セットバック)を義務付ける独自の条例を採択していた。

法廷での争点について、サミットは「郡の条例は連邦の安全基準および州の経路決定権限を侵害しており、無効である」と主張した。第8連邦巡回区控訴裁判所は2023年12月の地方裁判所の判決を支持し、1994年に制定されたパイプライン安全法(PSA)に基づき、パイプラインの安全基準に関する規制権限は連邦のパイプライン・危険物安全管理局(PHMSA)に排他的に属すると判断した。

判決を受け、シェルビー郡理事会は「驚きとともに失望している」との声明を発表し、法務顧問と今後の対応を協議する方針を示した。一方、業界団体である米カーボン・アライアンス(American Carbon Alliance)のトム・ブイス最高経営責任者(CEO)は、「エタノール産業や農業市場を支えるカーボンクレジット創出に不可欠なプロジェクトの進展を可能にするものだ」と述べ、最高裁の判断を歓迎した。

アイオワ州議会では現在、パイプライン建設に伴う土地の強制収用(土地収用権)の制限や、CCSインフラに関する新たな法案の審議が進められている。

法的な決着はついたものの、建設に反対する地主らによるロビー活動も活発化しており、炭素除去(CDR)インフラを巡る政治的、社会的な対立は今後も続く見通しだ。

今回の米最高裁の決定は、米国におけるCCS/CDRインフラ整備において「連邦による安全基準の統一性」が地方自治体の規制よりも優先されることを改めて明確にした。

これは、複数の自治体を跨ぐ広域的な炭素輸送ネットワークの構築において、事業者が「規制のパッチワーク」に直面するリスクを軽減する画期的な判断と言える。特に、低炭素燃料基準(LCFS)などのカーボンクレジット市場で優位に立ちたいエタノール産業にとっては、パイプラインの早期稼働が死活問題となっており、この判決は大きな追い風となるだろう。

一方で、地域コミュニティの懸念を置き去りにした開発は、日本のCCS事業においても教訓とすべき「社会的受容性」の課題を浮き彫りにしている。

参考:https://www.supremecourt.gov/DocketPDF/25/25-419/390214/20251223093929475_cert%20of%20word%20count%20-%20reply%20brief%20-%20Shelby%20Cnty.%20v.%20Couser%20-%20No.%2025-419.pdf

参考:https://www.supremecourt.gov/DocketPDF/25/25-419/387563/20251216095908463_25-419%20Brief.pdf