カリフォルニア州気候開示法で口頭弁論 排出量報告「SB 253」義務化の維持が焦点

村山 大翔

村山 大翔

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米連邦第9巡回区控訴裁判所の3判事パネルは2026年1月9日、カリフォルニア州の気候開示法(SB 253およびSB 261)の合憲性を巡る口頭弁論を実施した。

米商工会議所(USCC)などの経済団体が修正第1条(言論の自由)違反を訴えていたもので、排出量開示を義務付けるSB 253は有効に据え置かれた一方、気候リスク報告のSB 261は現在も執行停止状態にある。

本件の予備的差し止め請求に関する最終判断は2026年第1四半期(1〜3月)に下される見通しだ。

今回の法廷闘争は、カリフォルニア州で事業を行う一定規模以上の企業に対し、温室効果ガス(GHG)排出量や気候変動に伴う財務リスクの公表を強制する州法の是非を問うものである。原告側は、これらの開示が「イデオロギー的で主観的な言論を強要するものだ」と主張し、厳格な審査基準の適用を求めている。一方、州政府側は、投資家保護や消費者の透明性確保に向けた「事実に基づく商業的情報の開示」であると反論した。

現在、企業の関心は2つの法律で分かれている。

年売上高10億ドル(約1,500億円)以上の企業を対象とする気候企業データ責任法(SB 253)については、裁判所が差し止めを拒否したため、依然として有効だ。カリフォルニア大気資源局(CARB (California Air Resources Board))は、Scope1およびScope2の排出量に関する初回報告期限を2026年8月10日とする案を提示している。

対照的に、年売上高5億ドル(約750億円)以上の企業に気候関連財務リスクの報告を求める気候関連財務リスク法(SB 261)は、2025年11月18日の命令により執行が一時停止された。これにより、本来の期限であった2026年1月1日の報告義務は猶予され、現在は任意での報告受付に留まっている。CARBは2026年2月26日に公開諮問会を開催し、両法の実施に向けた最終的な規制パッケージを策定する予定だ。

裁判での論点は、SB 253が扱う「客観的な排出量データ」と、SB 261が求める「将来のリスクに関する叙述的な分析」の性質の違いに及んだ。一部の判事は、将来予測を含む財務リスク報告が主観的な表現を含む可能性について懐疑的な見方を示した。一方、排出量データについては、事実に基づく開示として州の権限を認める姿勢が維持される可能性が高い

今後の焦点は、第9巡回区控訴裁判所が2026年3月までに下す差し止め請求への判断、およびCARBによる詳細な運用ルールの確定に移る。SB 253の対象企業は、法的不確実性が残る中でも、8月の期限に向けた排出量データの計測と管理体制の構築を継続する必要がある。

今回の法廷闘争でSB 253(排出量報告)の義務化が維持されたことは、CDR市場やカーボンクレジットの需要に直接的な影響を与えるだろう。

企業は正確な排出量開示を迫られることで、2027年以降に予定されるScope3の報告も見据え、バリューチェーン全体の脱炭素化を加速させざるを得ない。

不確実性は残るものの、法的義務化の潮流そのものが逆転する可能性は低く、先行して高精度な計測とCDR調達を進める企業が、将来的な規制コストとレピュテーションリスクを最小化できるだろう。

参考:https://ww2.arb.ca.gov/public-comments/climate-related-financial-risk-reports-sb-261-docket