CO2回収・貯留の腐食問題を化学で解決 EMS大手のフォックスコンがCCS企業と台北に共同ラボ開設

村山 大翔

村山 大翔

「CO2回収・貯留の腐食問題を化学で解決 EMS大手のフォックスコンがCCS企業と台北に共同ラボ開設」のアイキャッチ画像

台湾の電子機器受託製造(EMS)最大手であるホンハイ・テクノロジー・グループ(Hon Hai Technology Group、フォックスコン)は1月8日、炭素回収・貯留(CCS)設計の世界的リーダーであるペース・シーシーエス(Pace CCS)と提携し、CO2輸送・貯留ネットワークの腐食を防ぐ「化学インジェクション・ユニット」の開発拠点となる研究所を台北市内に開設したと発表した。

この取り組みは、ネットゼロ達成に不可欠とされるCCSの社会実装を阻んできた技術的障壁を、半導体製造などで培った精密化学技術の応用によって打破し、炭素除去(CDR)市場の拡大を加速させることを目的としている。

CCSは、重工業などの脱炭素化が困難なセクターにおいて排出されるCO2を回収し、地下に貯留する重要な技術である。世界全体で年間80億トンのCO2回収需要が見込まれ、数兆ドル規模の投資が必要とされる一方で、輸送・貯留インフラ内部での腐食反応が大きな課題となっていた。

CO2流体に含まれる微量成分が化学反応を起こすと、硫酸や硝酸といった強酸、水、固形物が発生し、パイプラインの劣化や貯留井の閉塞を引き起こすことで、運用コストを大幅に押し上げる要因となっていた。

新たに稼働した台北の研究所では、半導体産業などの精密分野ですでに実績のある「化学スカベンジャー(不純物除去剤)」をCCS環境に適用する実証試験を行う。ペース・シーシーエス(Pace CCS)のマシュー・ヒーリー(Matthew Healey)常務取締役は「これはCCS業界が待ち望んでいた解決策だ。技術的な大きな課題を管理可能な運営費用に転換することで、世界的なCCSの展開を加速させることができる」と、その意義を強調した。

フォックスコンは、2024年の売上高が6.86兆台湾ドル(約31兆5,000億円)に達する巨大企業であり、現在は電気自動車(EV)やデジタルヘルス、ロボティクスといった「3+3」戦略を掲げて事業ポートフォリオの転換を急いでいる。

同社の最高環境責任者(CEO)であるロン・R・T・ホーン(Ron R. T. Horng)氏は「サプライチェーンで培った知見をエネルギー転換に生かせることを誇りに思う。業界の枠を超えたパートナーシップこそが、気候変動対策に有意義な進歩をもたらす」と述べた。

台湾政府もCCSの推進に本腰を入れており、国営の台湾電力(Taipower)が発電所でのパイロットプロジェクトを開始したほか、貯留地の選定に向けた法整備も進んでいる。

陸域の貯留容量に限りがある台湾では、洋上貯留や近隣諸国との地域間協力も視野に入れており、今回のフォックスコンによる技術開発は、将来的な炭素クレジットの創出やCCSネットワークの信頼性向上において、日本を含むアジア全域のモデルケースとなる可能性がある。

今回のフォックスコンの参入は、単なる異業種参入ではなく「CCSの信頼性と経済性」を劇的に変える可能性を秘めている。

これまでCCSは、インフラの維持管理コストや事故リスクがカーボンクレジットの価格(および保険コスト)を押し上げる要因となっていた。

半導体レベルの精密な不純物制御技術がCCSに導入されれば、高耐久・低メンテナンスなCO2輸送網が実現し、日本企業が推進するアジアでのCCS共同プロジェクトにとっても強力な追い風となるだろう。

参考:https://www.honhai.com.tw/en-us/press-center/press-releases/latest-news/1945