ドイツの研究団体カーボン・ドローダウン・イニシアティブ(Carbon Drawdown Initiative)は8月15日、炭素除去(CDR)技術「岩石強化風化(Enhanced Rock Weathering,ERW)」の効果を、従来の6カ月以上からわずか48時間で判定できる新しい実験方法を発表した。これにより、プロジェクトの初期段階で効果があるかどうかを早く判断でき、時間とコストの大幅な削減が期待される。
ERWは、細かく砕いた岩石を土壌にまいて、大気中のCO2を吸収させるCDRの方法だ。ただし、土壌と岩石の組み合わせによって効果が大きく変わるため、これまでの評価には何カ月もの時間が必要だった。
カーボン・ドローダウンは、2023〜2024年に行った実験で、400種類の土壌と岩石の組み合わせを温室で育て、どの組み合わせがCO2をしっかり除去できるかを確認した。しかし、結果が出るまでに通常200〜250日、長いもので1年以上かかった。
今回発表された新しい方法では、わずか30グラムの岩石と80グラムの土壌、150グラムの蒸留水をフラスコに入れ、48時間シェーカーで振り続けるだけでよい。この間に水の「電気伝導度(EC)」を測定することで、CO2除去に関係するアルカリ性の変化を予測できる。
実際に過去の実験と同じ30の組み合わせを使って再試験したところ、48時間で得られたECの値が、長期の実験で得られた結果とよく一致したという。「この方法があれば、効果のない組み合わせを最初から避けることができた」と研究チームは述べている。
この発見は、ERWを活用したCDRプロジェクトにとって大きな意味を持つ。効果の低い岩石を使ってしまうと、時間も費用も無駄になり、気候変動対策としての効果も得られない。短時間で効果を見極められれば、実用化が一気に進む可能性がある。
ただし、なぜこの簡易テストで正確に結果を予測できるのかは、まだはっきりしていない。研究チームは、「水が多いことで反応が加速しているのかもしれない」「振動で岩石の表面が削られ、反応が進みやすくなっている可能性もある」といった仮説を挙げており、今後さらなる調査を行うとしている。
カーボン・ドローダウンは今後もテストを重ね、さまざまな土壌と岩石の組み合わせでこの手法の有効性を確かめていく予定だ。効果が確認されれば、カーボンクレジット市場でのERWの活用がより現実的になるとみられる。
参考:https://www.linkedin.com/posts/carbon-drawdown-initiative_activity-7361106725325729793-VmNo