米国石油協会、CO2輸送の新指針を策定 「RP 1192」でCCUSインフラの安全性確立

村山 大翔

村山 大翔

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米国石油協会(API)は12月17日、ワシントンにおいて、二酸化炭素(CO2)パイプライン輸送の安全性と信頼性を強化するための新たな業界指針「推奨指針1192(RP 1192)」を策定したと発表した。

炭素捕獲・利用・貯留(CCUS)への関心が世界的に高まる中、設計から建設、運用、保守に至るまでのライフサイクル全体をカバーする初の包括的な標準を提示し、脱炭素インフラの拡充を後押しする。

二酸化炭素の輸送は、従来の石油やガスとは異なる物理的・化学的特性への対応が求められる。CO2は圧力と温度の状態によって気体、液体、そして超臨界(スーパークリティカル)の状態へと相変化するため、既存の危険物輸送規制だけでは不十分な側面があった。

今回発表された「RP 1192」は、こうした超臨界状態や液体、気体それぞれのフェーズにおける圧力管理や腐食リスク、非金属材料との相互作用、そして万が一の亀裂制御に関する具体的なガイドラインを定めている。

現在、米国では約5,200マイル(約8,368キロメートル)のCO2パイプラインが稼働しているが、ネットゼロ達成に向けてはさらなるネットワークの拡張が不可欠とされている。新指針では、新規建設だけでなく、既存の石油・ガス用パイプラインをCO2輸送用に転換(リパーパス)するための安全性評価や、CO2漏洩時の緊急時対応計画の策定についても詳細な手順を盛り込んだ。

APIのグローバル産業サービス担当シニア・バイス・プレジデントであるアンチャル・リダー氏は、「RP 1192は、事業者がCO2パイプライン特有の特性を管理するための構造化されたガイダンスを提供する。技術的知見を一つの文書に集約することで、安全で信頼性の高い運用を支援し、APIのイノベーションへの取り組みを前進させるものだ」と述べた。

この指針の策定には、パイプライン工学や運用管理の専門家が広く参画した。CCUSプロジェクトのデベロッパーや規制当局、そして地域社会に対し、インフラ拡充に向けた明確な基準を示すことで、投資の予見性を高める狙いがある。

今回のAPIによる標準化は、炭素除去(CDR)やCCSプロジェクトの商用化を加速させる「見えないインフラ」の整備として極めて重要だ。特に既存パイプラインの転換に関するガイドラインは、コスト削減を目指す事業者にとって大きな追い風となるだろう。

日本国内でもCCS事業法の議論が進む中、こうした国際的な安全基準の確立は、将来的な日本のCCS事業における海外連携や技術輸出の際のリファレンスとなる可能性が高い。

参考:https://www.api.org/news-policy-and-issues/news/2025/12/17/api-releases-new-recommended-practice-for-the-safe-transport-of-co2-by-pipeline