茶業でのJ-クレジット創出へ「方法論」承認を要望 埼玉県が政府へ意見書提出

村山 大翔

村山 大翔

「茶業でのJ-クレジット創出へ「方法論」承認を要望 埼玉県が政府へ意見書提出」のアイキャッチ画像

埼玉県議会は12月19日、茶樹の植樹による温室効果ガス削減効果をJ-クレジット制度の「方法論」として承認するよう求める意見書を、内閣総理大臣や農林水産大臣らへ提出した。

気候変動対策が喫緊の課題となる中、同県は茶樹が長期間にわたり二酸化炭素(CO2)を固定する能力に着目しており、地域経済を支える茶業の発展と脱炭素化を同時に推進する狙いがある。

県議会が提出した意見書によると、茶樹の寿命は約40年とされ、その生育期間を通じて樹体内に炭素を蓄積する特性を持つ。研究データでは、標準的な樹高を持つ30年生の茶樹において、1ヘクタールあたり31.3トンのカーボンストック量があると推定されている。

しかし、現状のJ-クレジット制度において、植物の成長による吸収・貯留が認められているのは森林分野に限定されており、茶樹は対象外となっている。

こうした背景を受け、埼玉県は茶樹の炭素貯留効果を正当に評価し、J-クレジットの新たな方法論として確立することを政府に求めた。先行事例として、国内最大の産地である静岡県では、民間主導による官民連携のカーボンクレジット創出の取り組みが既に始まっている。埼玉県は、日本文化を象徴する茶業を多角的に支援するため、国レベルでの制度整備と財政支援が必要不可欠であると指摘した。

意見書の提出先は、農林水産大臣、経済産業大臣、環境大臣のほか、内閣官房長官や経済財政政策担当大臣など多岐にわたる。埼玉県議会の白土幸仁議長名で送られたこの要請に対し、政府がJ-クレジットの適用範囲を農業分野、特に永年性作物へと正式に拡大するかどうかが今後の焦点となる。

今回の埼玉県による意見書提出は、森林に偏重していた国内の吸収源対策を、農業分野の実践的な炭素貯留へと広げる重要な一石となる。

特に茶樹のような永年性作物は長期的な炭素固定が科学的に証明されており、これをカーボンクレジット化できれば、担い手不足に悩む生産者の新たな収益源確保や、脱炭素を謳った茶葉のブランド化につながる大きなチャンスです。

今後、果樹など他の永年性作物への波及も含め、農林水産省による方法論策定の具体的なスケジュールに注目が集まります。

参考:https://www.pref.saitama.lg.jp/e1601/gikai-gaiyou/r0712/6.html#c