ジンバブエ政府は、気候変動による自然災害で被害を受けた地域の復興を支援するため、「損失と被害(Loss and Damage)基金」を新たに設立する方針を明らかにした。財源には、同国で進むカーボンクレジット取引の収益が活用される。
この基金は、洪水や干ばつ、暴風雨といった異常気象により、住宅や道路、橋などのインフラが壊れ、生計手段を失った農村や都市部の地域を対象に支援を行う。
取り組みは環境・気候・野生生物省が主導しており、今週には全国の92の地方自治体を対象としたワークショップを開催。炭素プロジェクトの仕組みや交渉の方法などを学び、地域が適正な利益を得られるよう支援する。
政府によると、カーボンクレジット取引で得られる収益のうち30%は国が受け取り、残り70%は地域の復興や開発に使われる。この仕組みにより、被災地が直接的な資金支援を受けられる体制が整う見込みだ。
環境省のワシントン・ジャカタ局長は、「この基金は、災害で被害を受けた地域にとって、非常に重要な支援策になる」と述べ、「インフラや生活基盤が壊れた地域が、この資金を使って再建や復旧を進められるようになる」と説明している。
また、基金を通じて、地域主導の開発や環境保全も進むことが期待されている。
ジャカタ局長は、「炭素取引に関わる企業や団体と地方自治体が協力する場面が今後増えていく。まずは自治体がカーボンクレジットの仕組みを理解し、投資家や購入者と対等に交渉できるようになることが重要だ」と強調した。
ジンバブエではすでに、マショナランド中部、マショナランド東部、マタベレランド南部などでカーボンクレジットのプロジェクトが進んでいるが、これまでの契約は地域社会に十分な利益をもたらしていなかったという。
「これまでの合意では、地域住民が十分に恩恵を受けられなかった。今後は、自治体が交渉力を高め、実質的な利益を確保できるようにする」とジャカタ局長は語った。
今週のワークショップでは、カーボンクレジットの投資モデルや資金の流れについても議論される予定で、政府はこの取り組みを通じて、カーボンクレジット収益を地域の復興資金として活用する体制づくりを加速させたい考えだ。