炭素除去(CDR)プロジェクトの開発を手掛ける米アニュー・クライメート(Anew Climate)と、全米最大級の民間森林所有者であるオーロラ・サステナブル・ランズ(Aurora Sustainable Lands)は12月9日、アメリカン・カーボン・レジストリ(ACR)が策定した最新の森林管理手法「IFM 2.1」に基づき、カーボンクレジットの発行を開始したと発表した。
本件は、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の品質基準を定める「ICVCM」から、高潔性を示す「コア・カーボン原則(CCP)」を満たすと認定された手法を用いた最初期の事例であり、森林系クレジットの信頼性回復に向けた重要な一歩となる。
動的ベースライン技術で精緻な算定を実現
今回カーボンクレジットが発行されたのは、オーロラが米南東部に所有する「ビッグ・ポプラ」「リトル・ベア」「カンバーランド・ギャップ」の3つの森林資産である。本プロジェクトの最大の特徴は、アニュー独自の評価プラットフォーム「エポック(Epoch)」を活用した炭素定量化技術にある。
従来の手法で一般的だった「静的なベースライン(参照シナリオ)」とは異なり、エポックでは以下の技術を組み合わせた「動的な測定」を行う。これにより、過大評価のリスクを排除し、透明性と正確性を飛躍的に高めている。
- 高解像度のリモートセンシング
- 衛星ベースの炭素追跡
- 機械学習(マシンラーニング)
- 地上での観測データ
アニューの環境製品部門代表であるジョシュ・ストラウス氏は、「今回の発行は、高品質な森林炭素の進化におけるブレイクスルーだ」と述べた。さらに同氏は、「ACRの厳格な方法論とオーロラの土地管理、そして我々のエポック評価フレームワークを組み合わせることで、森林炭素の信頼性、透明性、拡張性の基準を引き上げている」と強調した。
VCMの信頼性回復を牽引する「CCP」適合案件
本プロジェクトで採用されたACRの「改良森林管理(IFM)バージョン2.1」は、ICVCMにより、厳格な品質基準である「コアカーボン原則(CCPs)」に適合していると承認された数少ない方法論の一つである。
近年、森林由来のカーボンクレジットはベースライン設定の甘さや過大発行疑惑により市場の信頼が揺らいでいたが、CCPラベル付きカーボンクレジットの供給開始は、機関投資家や企業の調達担当者にとって品質保証の新たな指標となる。
165万エーカーを管理する大規模プレイヤーの連携
オーロラは全米で約165万エーカー(約67万ヘクタール)の森林を管理しており、かつて産業用木材生産地だった土地を、長期的な炭素貯留と生物多様性の資産へと転換する戦略をとっている。
オーロラのジェイミー・G・ヒューストン4世CEOは、「この成果は、気候変動に配慮した森林管理(クライメート・スマート・フォレストリー)と科学に基づく土地管理が連携することで、投資家、生態系、そして気候に対して実証可能な結果を生み出せることを示している」と指摘した。
今回の発行は、最新のデジタル技術と厳格な基準の融合が、いかにして大規模かつ信頼性の高い気候変動対策ソリューションを提供できるかを実証するモデルケースとして、今後のVCMのトレンドを左右する可能性がある。
参考:https://www.anewclimate.com/news/anew-climate-aurora-sustainable-lands-issue-carbon-credits-under-acr-ifm-methodology

