米マイクロソフト(Microsoft)は12月11日、再生可能燃料の開発を手掛けるC2Xと、12年間にわたる大規模なCDRクレジットの購入契約を結んだと発表した。同社は、日本のENEOSが出資するC2X傘下の米ルイジアナ州「ビーバー・レイク」プロジェクトから、合計360万トン分のカーボンクレジットを調達する。
今回の契約でマイクロソフトが購入するのは、高品質なCDR由来のカーボンクレジットだ。C2Xの子会社であるビーバー・レイク・リニューアブル・エナジーが、森林の廃材を原料としてバイオメタノールを製造し、その過程で発生する「生物由来(バイオジェニック)のCO2」を回収して地中深くへ恒久的に貯留する。この一連のプロセスによって創出された削減価値が、カーボンクレジットとしてマイクロソフトに引き渡される仕組みだ。
C2Xの計画によると、この施設は海運・航空・化学産業向けに年間50万トン以上のバイオメタノールを生産する能力を持つ。それと同時に、年間約100万トンのCO2を回収・貯留することが可能だという。カーボンクレジットの信頼性を担保するため、国際的な業界団体ICROAが承認した登録簿を使用し、独立した第三者機関による検証を受ける。また、原材料の調達においても、EUの再生可能エネルギー指令(EU RED III)の厳格な基準を遵守する方針を示している。
注目すべきは、C2Xには日本のエネルギー大手ENEOSも少数株主として参画しており、筆頭株主である海運大手A.P. モラー・マースクの親会社、A.P. モラー・ホールディングと共に事業を推進している。
プロジェクトの総投資額は約25億ドル(約3,800億円)に上る見込みで、建設期間中には最大1,150人の雇用を生み出し、地域経済の活性化にも貢献するとされる。かつて紙パルプ産業が盛んだったルイジアナ州において、工場の閉鎖で打撃を受けた林産業を支援しつつ、同州でのCO2輸送・貯留インフラへの投資を加速させる狙いもある。
マイクロソフトのCDRポートフォリオ担当ディレクター、フィリップ・グッドマン氏は次のように期待を寄せた。 「ビーバー・レイク・プロジェクトは、大規模な炭素除去を実現する貴重な機会です。それだけでなく、グリーンメタノールの生産を通じて、より広範な脱炭素化の取り組みを後押しすることにもつながります」
今後のスケジュールとして、2026年後半に建設を開始し、2029年中の操業開始を目指している。

