国際的な綿花生産の持続可能性プログラムである「ベター・コットン・イニシアティブ(BCI)」と、クライメートテック企業のプランブー(Planboo)は、インドの綿花農場においてバイオ炭の生産・活用を行う新たなパイロットプロジェクトを発表した。綿花収穫後の農業廃棄物をバイオ炭へ転換することで、CDRクレジットの創出とファッション業界におけるサプライチェーン排出(Scope3)の削減モデル確立を目指す。
プロジェクトは2026年2月から、インドのグジャラート州およびマハラシュトラ州で開始される予定だ。
廃棄物375トンを処理、デジタルMRVで炭素除去を保証
本プロジェクトでは、対象となる75軒以上の綿花農家に、バイオ炭を製造するための専用窯(キルン)3基を導入する。これらの設備は、年間375トンの農業廃棄物を処理し、60〜70トンのバイオ炭を生成する能力を持つ。
従来、綿花農家では収穫後の残渣(茎や葉など)を野焼き処理することが一般的であり、これが大気汚染や健康被害の原因となっていた。今回の取り組みでは、これらの残渣をバイオ炭として炭化させることで、土壌改良材として活用しつつ、炭素を土壌中に100年以上にわたって固定することが可能となる。
特筆すべきは、プランブーが開発したデジタル計測・報告・検証(dMRV)システム「MRVin」の導入だ。このシステムは、バイオ炭の生産から炭素除去量の算出までをエンドツーエンドで追跡し、信頼性の高いデータを生成する。創出される炭素除去量は、カーボン・スタンダーズ・インターナショナル(CSI)が定める「Global Artisan C-Sink Guidelines」に基づいて認証される見通しだ。
農家の新たな収益源と「Scope3」への貢献
プランブーの創業者であるフレディ・キャトロー氏は、綿花残渣を「未活用の資産」と表現し「農家は『学び、燃やし、稼ぐ(Learn, Burn, Earn)』ことが可能になる。廃棄物をバイオ炭に変えることで、土壌の回復力を高め、繊維産業の基盤である農家を支援できる」と述べている。
この取り組みは、農家に対してバイオ炭による土壌改良効果をもたらすだけでなく、高品質なCDRクレジットの販売による新たな収入源を提供する。
また、アパレルブランドや小売業者にとっても重要な意味を持つ。ファッション産業の温室効果ガス排出の大半を占めるScope3に対し、このプロジェクトはカーボンインセッティングのアプローチとして機能する可能性があるためだ。
2026年末に成果検証へ
プロジェクトは2026年末に完了する予定であり、BCIはその時点で蓄積されたデータと知見をメンバー企業と共有する。
BCIのインパクト担当ディレクター、ラース・ファン・ドレマーレン氏は、「バイオ炭は温室効果ガスの大幅な削減と炭素除去を実現し、気候変動の影響に対して農業コミュニティを強靭化する潜在力がある」と指摘した。
両社は、今回のパイロットプロジェクトで得られる農業指標や炭素除去データを評価し、将来的にはこのモデルを大規模に展開することで、環境的・経済的利益をフィールドレベルからグローバルなサプライチェーンへと広げていく方針だ。
参考:https://bettercotton.org/better-cotton-initiative-and-planboo-to-launch-biochar-project-in-india/

