日本GXグループ(JGX)が運営する日本カーボンクレジット取引所(JCX)は11日、Web版プラットフォームの全面リニューアルを実施したと発表した。法人会員向けに保有クレジットの時価評価をリアルタイムで可視化する「クレジット管理ダッシュボード」を新たに実装したほか、これまでスマートフォンアプリに限定していた個人投資家の取引機能をWebブラウザにも開放した。企業の脱炭素経営における資産管理の効率化と、個人層の取り込みによる市場流動性の向上を図る。
「見えない資産」を可視化・財務戦略へ直結
今回導入された法人向け「クレジット管理ダッシュボード」は、企業が保有するJ-クレジットなどの環境価値を金融資産として統合管理するための機能だ。従来の管理手法では、保有数量や取得単価、現在の市場価値が不明瞭になりがちだった課題に対応した。
新機能では、保有するクレジットの種類や量を円グラフなどで視覚的に表示するだけでなく、市場価格と連動した「リアルタイム評価額」を提示する。取得価格との比較による損益状況(%表示)も一目で確認できるため、担当者は環境投資計画の立案や、オフセットに必要な不足分の買い増し、余剰分の売却といった意思決定を迅速に行えるようになる。管理画面から取引画面へシームレスに移行できるUXも整備し、実務負担を軽減した。
個人取引の裾野拡大、PCでの詳細分析に対応
これまでiOSおよびAndroidアプリのみに限定されていた個人向け取引機能が、Webブラウザ上で利用可能になった点も大きな変更点だ。これにより、個人投資家はPCの大画面を用いて価格チャートやプロジェクト詳細を分析しながら取引を行うことが可能となる。
JCXは、環境貢献に関心を持つ個人層からの「詳細情報を確認しながらWebで取引したい」という要望に応えた形だ。個人の参入障壁を下げることで、クレジット市場全体の厚みと流動性が増すことが期待される。なお、個人の口座開設には引き続きモバイルアプリでの認証が必要となる。
吸収系含む5銘柄を取り扱い
現在、同取引所で取り扱われているのは以下のJ-クレジット5銘柄である。
- 再エネ(電力):太陽光・風力・水力などの再エネ電力由来(JCREE)
- 再エネ(熱):再生可能熱エネルギー由来(JCREJ)
- 省エネ:省エネ機器導入・効率化による排出削減(JCECO)
- 森林:適切な森林管理によるCO2吸収(JCFOR)
- 農業:農地炭素貯留・農業由来排出削減(JCAGR)
特に「森林」および「農業」銘柄は、大気中のCO2を直接固定する「炭素除去(CDR)」の性質を持つクレジットとして、ネットゼロ目標を掲げる企業からの需要が高まりつつある分野だ。
JCXは今後、J-クレジット市場の動向に応じた銘柄の拡充や、企業の基幹システムと接続するAPI連携などの機能強化を進める方針だ。テクノロジーを通じて環境価値の流通を加速させ、日本国内のGX(グリーントランスフォーメーション)推進を後押しする構えだ。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000121500.html

