「人権を守るカーボンクレジット」 東京ガスなど3社が新たな評価ルールを策定

村山 大翔

村山 大翔

「「人権を守るカーボンクレジット」 東京ガスなど3社が新たな評価ルールを策定」のアイキャッチ画像

8月12日、東京ガスは東京海上日動火災保険、日本工営とともに、カーボンクレジット創出プロジェクトにおける人権リスクを防ぐための新たな評価ルール(フレームワーク)を発表した。特に開発途上国での人権侵害が国際的な課題となる中、クレジットの信頼性を高める仕組みづくりに踏み出した。

今回発表されたフレームワークは、カーボンクレジットを生み出す企業が守るべき「人権配慮」のチェック項目と管理の仕組みを整理したものだ。東京ガスはこの基準を自社のクレジット評価に組み込むことで、顧客に提供するクレジットの質と信頼性を高める狙いがある。

背景には、温室効果ガス(GHG)の排出を相殺する手段として広がるカーボンクレジット市場で、人権問題が深刻化している事情がある。開発途上国のプロジェクトでは、現地の人々への不当な労働や先住民の立ち退きといった問題が報告され、クレジットの「倫理性」が問われていた。

これまでの国際ルールでは、二酸化炭素の削減や吸収量の計測が中心で、人権への配慮は曖昧なままだった。そこで東京ガス、東京海上日動、日本工営の3社は、それぞれの専門知見を持ち寄り、弁護士の蔵元左近氏をはじめとする専門家の助言を受けながら、現場でも使いやすい具体的なルールを作り上げた。

この新ルールは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」など、国際的な方針をもとに作られている。カーボンクレジットに関わる企業がどのように人権を守るか、その道しるべとして使える内容だ。3社は自社内でもこれに沿った実務ルールを作成し、現場でしっかり活用できるようにしている。

東京ガスは今後、このルールを自社が関わるすべてのクレジット事業に適用し、信頼できるカーボンオフセットの提供につなげると説明している。これまでも都市ガスのオフセット提供などに取り組んできたが、今後は人権の観点でも品質を保証したクレジットを提供する方針だ。

同社は「Compass2030」という経営ビジョンで、CO2排出を実質ゼロにする目標を掲げており、人権を重視した今回の取り組みはその一環でもある。2025年10月には創立140周年を迎える東京ガス。今後も信頼されるカーボンクレジットの提供を通じて、持続可能な社会づくりに貢献していく。

参考:https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20250812-02.html

参考:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/250812_01.pdf