ボランタリーカーボン市場の先駆者「ICROA」が2026年後半に解散へ 監視・認証の役割をICVCMらに継承

村山 大翔

村山 大翔

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国際炭素削減・オフセット連盟(International Carbon Reduction and Offsetting Alliance、以下ICROA)は12月5日、2026年後半までに組織の運営を終了すると発表した。2008年の設立以来、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)における行動規範の策定を主導してきた同団体だが、市場の成熟に伴い、近年台頭してきた新たな監視枠組みへその役割を引き継ぐ形となる。

ICROAは、自主的炭素市場の黎明期において、市場参加者が最良の実践(ベストプラクティス)を強化することを目的として設立された。英国、米国、オーストラリアの先駆的なカーボンクレジット専門家らによって創設され、当時は類似のプログラムが存在しない中、市場による市場のための組織として機能してきた。特に同団体が定めた「行動規範(Code of Best Practice)」は、事業者が自身のパフォーマンスを透明性高く測定・報告するための明確な基準として、市場から広く認知され、承認・推奨プログラムへの参加も多数集めていた。

今回の解散決定の背景には、近年の市場環境の急速な変化がある。過去5年間で、より包括的な監視イニシアチブである自主的炭素市場のための整合性評議会(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market、以下ICVCM)や、自主的炭素市場統合イニシアチブ(Voluntary Carbon Markets Integrity Initiative、以下VCMI)が相次いで発足した。ICROAは、これら新しいイニシアチブが自身が開始した取り組みを継続するのに適した位置にあると判断し、活動の幕引きを決定した。

ICROAのマネージング・ディレクターであるアンドレア・エイブラハムズ(Andrea Abrahams)氏は声明で、「過去15年間にわたるICROAコミュニティの活動を誇りに思うとともに、多くの支援者に感謝している」と述べた。その上で、「ICROAコミュニティは、今日の市場が依拠している新しい整合性(インテグリティ)枠組みへの道を切り開く一助となったと確信している」と指摘した。

ボランタリーカーボン市場の先駆者「ICROA」が2026年後半に解散へ 監視・認証の役割をICVCMらに継承における品質保証の「バトン」は、草分け的な存在であるICROAから、現代的なガバナンスを備えたICVCMやVCMIへと正式に渡されることになる。市場の健全化と信頼性向上に向けた枠組みの統合が進む中、2026年の解散に向けた具体的な移行プロセスが注目される。

参考:https://icroa.org/carbon-market-conduct-pioneer-passes-on-the-baton/