クライムワークス、世界最大の「DACイノベーションセンター」をチューリッヒに開設、CDR供給加速へ

村山 大翔

村山 大翔

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スイスの気候変動テック企業で、空気から二酸化炭素(CO2)を直接回収する直接空気回収(Direct Air Capture、DAC)技術の先駆者であるクライムワークス(Climeworks)は12月4日、スイス・チューリッヒに次世代DACソリューション専用施設として世界最大となる「DACイノベーションセンター」を開設した。

コスト高が課題のDAC、世界最大拠点で技術革新を加速

チューリッヒ市内で稼働を開始したこの新センターは、DAC技術の最大の障壁となっている高コストの低減に向けた道筋を探るためのテスト拠点となる。スイスの強固なイノベーションエコシステムと技術人材を活用し、50人以上のエンジニア、化学者、技術スペシャリストを結集。同社が15年以上にわたり培ってきた知見に基づき、DACのコスト削減とスケールアップ戦略の「エンジンルーム」として機能し、カーボン除去(CDR)の世界的な大規模展開を加速させる構えだ。

「吸着材」から「システム最適化」まで一元開発

同センターは、DAC開発の主要な全要素を対象とする。具体的には、次世代吸着材の開発、エネルギー使用量の改善、モジュール化とスケーラビリティに関するシステム最適化、小・中規模のテスト施設を通じた統合プロトタイピング、および多様な気候や環境下でのDACの耐久性評価が含まれる。この統合的アプローチにより、イノベーションサイクルを短縮し、展開リスクを低減させ、同社の世界的な成長パイプラインにおける大規模導入への道筋を早めることが期待されている。センターの取り組みは、ラボスケールで吸着材の安定性を10倍に高め、プロセス密度を2倍にするなど、クライムワークスの近年の技術的飛躍を実現するための基盤インフラを提供する。

「コスト削減がミッションクリティカル」

クライムワークスの共同最高経営責任者(Co-CEO)であるヤン・ウルツバッヒャー氏は、新センターの開設に際し、「世界は大規模なカーボン除去を必要としており、それはコスト削減がミッションクリティカル(最重要課題)であることを意味する」と述べた。

さらに、「クライムワークスDACイノベーションセンターは、我々の最近のブレークスルーを展開可能で、効率的、かつより手頃なソリューションに変える手段だ」とし、アイスランドの稼働中のプラントと組み合わせることで、「クライムワークスが世界のカーボン除去の次なる段階を主導する」と指摘した。

炭素除去の啓発活動も展開

また、DACイノベーションセンターの開設と並行して、訪問者がカーボン除去を直接体験できる「カーボン除去展示(Carbon Removal Exhibition)」も公開。DACをはじめとする主要なCDR技術を紹介し、それらが世界中の経済やコミュニティにもたらす改善点を強調している。クライムワークスは、高品位なCDRプロバイダーとして、DAC技術における数十年の専門知識と、テイラーメイドのカーボン除去ソリューションを組み合わせて提供することで、ネットゼロへの世界的な移行を加速させている。

参考:https://climeworks.com/press-release/climeworks-launches-the-largest-dac-innovation-center