トヨタ自動車東日本（TMEJ）と農業由来の温室効果ガス（GHG）削減を手掛けるフェイガーは、2025年11月、TMEJの社員食堂において、J-クレジット制度に基づく水田でのメタンガス削減技術を活用して生産された「環境配慮米」を提供した。
この取り組みは、企業がカーボンクレジットの創出活動を支援し、その成果物である環境価値を社員の日常的な消費行動に取り込むという、農業の脱炭素化を起点とした地域価値循環の具体的なモデルケースとして注目を集めている。
TMEJとフェイガーの協業の一環として実施された本イベントでは、フェイガーのプロジェクトに参加する東北地域の生産者が、J-クレジット制度の「水稲栽培における中干し期間の延長」方法論に基づき、メタンガス排出量を削減して生産した米が提供された。この中干し延長は、水田からのメタン排出量を削減する手法であり、削減量がカーボンクレジットとして認証される。
「TMEJは、地域とともに持続可能な社会を目指す活動を推進している。今回の環境配慮米の提供は、地域農業の脱炭素化の応援と、従業員の環境意識を高めることを目的とした」とTMEJ担当者は述べ、地元のJA岩手ふるさと、JA新みやぎの協力による地産地消にも貢献できたと指摘した。
今回の取り組みは、企業のCSR活動と連動し、日々の食事を通じて従業員一人ひとりが農業分野における脱炭素活動の重要性を「体感」する機会を創出した。社員からは「地域のお米を美味しく頂きながら、環境配慮米を知る機会になった」といったコメントが寄せられ、地域と農業者支援への理解を深める結果となった。
イベント期間中には、フェイガーが「水稲栽培における中干期間延長による農地の脱炭素化活動」に関する説明会も実施され、カーボンクレジット創出の仕組みと環境への貢献について従業員への啓発を促した。
フェイガーは、中干し延長のほか、バイオ炭の農地施用による炭素貯留など、農業由来のGHG削減を軸に、国内最大級規模の農業由来クレジットの創出実績を有しているスタートアップである。同社は今後も自治体や企業と連携し、カーボンクレジットを活用した持続可能な農業と地域循環型の価値創出を推進していく方針だ。TMEJの事例は、農業由来クレジットの需要家と供給源である地域農業を結びつけ、日本のカーボンクレジット市場の活性化に向けた具体的な方向性を示すものとなった。
参考：https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000114514.html
