両備システムズとアジクル、バングラディッシュNGOのANTAR Society for Developmentがバングラデシュで共同実施した農業デジタルトランスフォーメーション(DX)実証事業が、メタン排出量の平均30%以上削減という目標達成の成果を上げ、カーボンクレジット創出の実現性を現地政府に報告した。
2025年12月2日、バングラデシュ農業省副次官を含む政府関係者に対し、主要パートナー企業3社が事業の最終成果を提示。持続可能な農業技術「AWD農法」の普及と、農業データプラットフォームの活用が、生産性向上と温室効果ガス(GHG)削減を両立させるカギであると確認された。
今回の実証は、経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業」に採択され、2025年2月から12月にかけて実施された。事業を通じて、水田に水を満たした状態と干した状態を数日おきに繰り返すAWD農法(Alternate Wetting and Drying)を導入。その結果、水田からのメタン排出量を目標値30%削減に対し、平均で30%以上の削減を達成した。また、生産性も20%以上向上したという。
この技術的成果は、メタン排出削減という市場性の高いGHG削減と、農家の収入向上に直結する生産性向上を両立させるものであり、バングラデシュ政府機関や農家からの関心が高まっている。合計5,697ヘクタール(目標3,900ヘクタール)の作付面積でAWD農法が実施され、そのデータが農業データプラットフォームを通じて収集・分析されている。
バングラデシュ稲研究所(Bangladesh Rice Research Institute, BRRI)の上級科学者であるS. M. Mofijul Islam博士は、「本件はバングラデシュ農業のカーボンフットプリント削減と、農家の社会経済的向上に大きく貢献すると信じている」と評価した。同博士は、AWD農法が水の節約と収量増加、生産コスト低減、メタン排出削減をもたらすと指摘。しかし、水の利用量削減が農家の灌漑コスト削減に直結しないという政策的課題があるため、政府、農家、ポンプ所有者間の連携による解決が必要だと述べた。
今後、両備システムズらは、実施エリアの拡大とデータプラットフォームの浸透を図り、AWD農法のさらなる普及を目指す。特に、メタン排出削減によるカーボンクレジット創出に向けた取り組みを現地政府機関と連携して進める方針だ。この仕組みが確立すれば、創出されたカーボンクレジット収益が農業従事者に還元され、農家の財政的困難を解決する新たな収益源となることが期待されている。

