アフリカのクリーンクッキング機器大手バーン(BURN)と仏クライメート・ソリューションズ(Climate Solutions)は11月28日、バイオマスコンロ(調理用ストーブ)の性能や使用状況をデジタル技術で追跡する新たな測定手法について、国際的な炭素認証機関であるゴールドスタンダード(Gold Standard)から正式な実施承認を取得したと発表した。両社はナイジェリアで約1,000台のストーブを対象としたパイロットプロジェクトを開始し、厳格な品質基準を満たす「CCPラベル」付きカーボンクレジットの創出を目指す。
今回の承認は、これまで労働集約的な実地調査に依存していたクリーンクッキング分野の排出削減量測定(MRV)を、デジタル主導へ転換する重要な節目となる。両社が導入する「デジタル・キッチン・パフォーマンス・テスト(dKPT)」は、ストーブの使用データを自動的かつリアルタイムに収集するシステムだ。
具体的には、ナイジェリアのクワラ州で配布されるバーン製の「ECOA Char」ストーブに対し、燃料消費量を記録するデジタルスケールや、手書きの記録簿を代替する電子販売プラットフォームを活用する。さらに、一部のストーブにはセンサーを設置し、継続的な使用状況をモニタリングする。
このデジタル化により、人為的な記録ミスを抑制し、データの透明性と正確性が飛躍的に向上すると期待される。測定されたデータは、ゴールド・スタンダードが定める既存の炭素会計プロトコル「TPDDTEC方法論 バージョン4.0」と統合され、排出削減量の算出に用いられる。
特筆すべきは、このプロセスを通じて発行されるカーボンクレジットが、ICVCMが定める「コアカーボン原則(CCP)」ラベルの取得を前提としている点だ。カーボンクレジット市場では近年、プロジェクトの信頼性が厳しく問われており、バイヤーは検証可能な高品質なクレジットを求めている。
バーンのピーター・スコットCEOは、「クリーンクッキングセクターにとって朗報だ。投資家の信頼を高め、データの正確性を向上させ、最高品質のクレジットを保証する技術を開拓できることを誇りに思う」と述べ、同社の技術的リーダーシップを強調した。 また、クライメート・ソリューションズのオリビエ・ルフェーブルCEOは、「ついに技術の準備が整った。このパイロット事業は、データ主導による気候インパクト測定の新たな基準となるだろう」と指摘した。同社のプラットフォームは、開発者や監査人、バイヤーに対してストーブの使用データを公開し、透明性を担保する役割を担う。
バーンは2011年以来、アフリカ12カ国で約600万台の調理器具を普及させ、約3,200万人の生活向上と森林保全に貢献してきた実績を持つ。同社の製品は燃料使用量を最大60%削減し、CO2だけでなく強力な短寿命気候汚染物質であるブラックカーボンの削減にも寄与している。これまでに950万トンのゴールド・スタンダード認証クレジットを創出しており、今回のデジタル化によって、その信頼性はさらに強固なものとなる見通しだ。
