特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)と野村證券は12月2日、二国間クレジット制度(JCM)を活用した森林再生プロジェクトの推進に関する業務協力の覚書を締結したと発表した。国際NGOが持つ開発途上国でのコミュニティ形成力と、大手証券会社が持つ金融・クレジット組成のノウハウを融合させ、住民参加型の「自然再生(FMNR)」手法を通じた高品質なカーボンクレジット創出を目指す。
「FMNR」手法で安価かつ迅速な緑化を
今回の提携の核となるのは、ワールド・ビジョン(WV)が長年推進してきた「FMNR(Farmer Managed Natural Regeneration:住民主体の自然再生)」と呼ばれるアプローチだ。これは大規模な植林を行うのではなく、土地に存在する切り株や地下茎、種子などを住民が管理・保全することで、低コストかつ迅速に植生を回復させる手法である。
WVは2006年、エチオピアのフンボ地域において、このFMNRを用いた事業で京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)承認を取得した実績を持つ。同事業は、森林再生による二酸化炭素(CO2)吸収量のクレジット化に成功しており、今回の提携はこの知見を、日本政府が推進するJCMスキームに応用するものとなる。
インドネシアなどで事業化検討へ
両者は今後、インドネシア、カンボジア、ケニアなどのJCMパートナー国において具体的な事業化に向けた調査・検討を開始する。野村證券は、カーボンクレジットや森林ファンドの組成・販売で培った金融スキームを提供し、プロジェクトの資金循環とクレジット認証取得を支援するとみられる。
本プロジェクトは、単なる温室効果ガス削減にとどまらず、地域住民の生計向上や防災機能の強化といったコベネフィットを重視している。気候変動の影響を強く受ける途上国の脆弱層に対し、環境保全と経済開発を両立させるモデルを構築することで、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献と、投資家に訴求力のあるカーボンクレジット創出を狙う。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000005096.html
