カーボンクレジット基準のエクイタブル・アースが先住民族主導のガバナンス組織を公募

村山 大翔

村山 大翔

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独立系の自然由来カーボンクレジット基準である「エクイタブル・アース(Equitable Earth)」は2025年11月末、森林保全プロジェクトにおける地域社会の権利保護と発言力を強化するため、新たに「先住民族および地域コミュニティ(IPs & LCs)作業部会」の公募を開始した。これは、従来の炭素市場において批判の対象となりがちだった「地域コミュニティの権利軽視」という課題に対し、ガバナンスレベルでの構造改革を図る動きであり、高品質なカーボンクレジット創出に向けた重要な一歩となる。

技術諮問委員会への直接参画

今回設立される作業部会は、単なる意見交換の場ではなく、同基準の統治構造に深く組み込まれる。選出されたメンバーは、エクイタブル・アースの「技術諮問委員会(TAB)」の一員として機能し、プロジェクトの設計、監視、検証方法に対し直接的な指導を行う権限を持つ。

具体的な役割として、以下の点が挙げられている。

  • 基準の強化
    特に「生計(Livelihoods)」に関する柱の策定において、現場の現実を反映させる。
  • FPICの徹底
    「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」が、形式的ではなく実質的に確保されるプロセスを構築する。
  • 伝統的知識の統合
    科学的な測定手法に加え、先住民族が持つ伝統的な生態系管理の知識を方法論(メソドロジー)に組み込む。

エクイタブル・アースは声明で、「信頼できる保全・修復活動は、先住民族や地域コミュニティの権限と経験を尊重し、高めるものでなければならない」と述べ、プロジェクトのあらゆる段階におけるコミュニティの関与が不可欠であると強調した。

既存市場への批判と「高潔性」の追求

今回の動きの背景には、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)に対する世界的な視線の厳格化がある。特に森林減少・劣化の抑制(REDD+)プロジェクトにおいては、過去、地域住民の土地権利を無視したり、利益配分が不透明であったりする事例が報告され、カーボンクレジット全体の信頼性を損なう要因となっていた。

2025年初頭に「エコシステム・レストレーション・スタンダード(Ecosystem Restoration Standard)」からリブランドした同組織は、こうした批判を克服し、炭素削減効果だけでなく社会的公正性を担保した高潔性を競争力の源泉としている。今回の作業部会設置は、この方針を制度的に担保する措置といえる。

募集要項と今後のスケジュール

公募は世界中の先住民族および地域コミュニティのリーダーを対象としており、保全活動、コミュニティ・ガバナンス、伝統的知識に関する経験が求められる。多様性を確保するため、地域、文化、ジェンダーのバランスが考慮されるほか、英語以外の言語での応募も可能となっている。

応募期限は2026年1月30日までとなっており、選定されたメンバーは、次世代の森林保全金融のモデルケース構築に携わることになる。

参考:https://www.eq-earth.com/blog/equitable-earth-launches-applications-to-an-indigenous-peoples-local-communities-working-group