オランダを拠点とするクオンタムトレーディング企業のIMCトレーディング(IMC)は11月25日、シロナ・テクノロジーズ(Sirona)がケニアで展開する直接空気回収(DAC)プロジェクト「プロジェクト・ジャカランダ」から、永続的なCDRクレジットを購入したと発表した。シロナが開発するモジュール式DAC技術の商用規模への拡大を資金面から支援し、高品質な気候変動対策を推進する狙いがある。
IMCによる今回の購入契約は、シロナが進めるDAC技術のスケールアップを直接的に加速させるものだ。気候の安定化には温室効果ガスの排出削減だけでは不十分であり、大規模なCDRと永続的な貯留が不可欠とされる。シロナのDACシステムは、大気中から二酸化炭素(CO2)を直接回収し、地中の地層へ貯留することで岩石へと鉱物化させる。これにより、極めて高い永続性と測定可能性を確保した炭素除去が可能となる。
シロナの特徴は、DACシステムを「モジュール式」で設計し、迅速な展開を可能にしている点にある。これらを組み合わせることで大規模な炭素除去プラントを構築する手法を採っており、展開ごとにコスト削減と規模拡大のスピードアップを図っている。同社は2025年1月からパイロットプラントを稼働させており、現地でのパイロット展開速度としては世界最速を記録した。
IMCのグループオペレーション責任者であるティモシー・ホール氏は、同社の投資判断について次のように述べた。 「IMCは、真に測定可能な気候インパクトをもたらすソリューションを支援することの重要性を理解している。技術主導の企業として、明確なエンジニアリングと反復を通じてスケールアップ可能なソリューションに惹かれる。シロナのモジュール式DACアプローチこそが恒久的な炭素除去を拡大する正しい道筋であると考えており、現段階で支援できることを嬉しく思う」
また、シロナのCEO兼共同創業者であるトラルフ・グティエレス氏は、今後の展望について次のように指摘した。 「シロナは現在、複数の地域でプロジェクトを進めており、2025年中に最初の商用ユニットが稼働し、2026年にはさらなる拡大を予定している。今日の段階で、耐久性のあるCDRを支援する責任と利点の双方を認識しているIMCのような、気候変動対策に野心的な組織と協力を続けられることを楽しみにしている」
シロナは、2026年時点で市場にDAC由来のカーボンクレジットを提供する数少ない事業者の一つとなる見込みだ。一方、1989年設立のIMCは、高度なアルゴリズムと統計的手法を用いるトレーディング企業であり、世界で1,900人以上の従業員を擁している。今回の契約により、金融・トレーディング業界からのCDR市場への資金流入がさらに注目されることになりそうだ。
