Verra、審査開始を早める「優先レーン」を試験導入 審査待ち問題を解決へ

村山 大翔

村山 大翔

「Verra、審査開始を早める「優先レーン」を試験導入 審査待ち問題を解決へ」のアイキャッチ画像

世界最大のカーボンクレジット認証機関である米ベラ(Verra)は26日、カーボンクレジット発行に向けた検証承認リクエストの審査開始を早める新たな優先順位付けプロセスの試験運用を開始した。プロジェクト開発者は、カーボンクレジットの発行量に応じた追加手数料を支払うことで「優先キュー」を利用でき、通常よりも早期に審査プロセスへ入ることが可能となる。

今回の措置は、カーボンクレジット市場において長年の課題となっていた「認証・発行までのタイムラグ」を解消する狙いがある。ベラによると、優先キューを利用したプロジェクトは審査の着手が早まるものの、審査自体(技術的レビュー)の手順や厳格さ、サービスレベル合意書(SLA)に基づく所要時間は通常プロセスと変わらない。あくまで「審査の順番待ち」を短縮する仕組みだ。

ヴェラのチーフ・プログラム・マネジメント・オフィサーであるジャスティン・ウィーラー氏は、この仕組みを空の旅に例え、次のように説明した。 「これはプロジェクト開発者に、空港の保安検査場における『優先レーン(ファストトラック)』へのアクセス権を提供するようなものだ。一度セキュリティチェック(技術的レビュー)に入れば、プロセスの品質を維持するため所要時間は変わらないが、優先キューに入ることで大幅な時間の節約が可能になる」

優先キューの利用には、以下の費用が必要となる。

  1. 優先手数料(Prioritization Fee):予想されるクレジット発行量(ERRs)に基づき設定される(下表参照)。
  2. 発行手数料の前払いデポジット:予想発行手数料の50%、または5万ドル(約755万円)のいずれか少ない額。

【優先手数料の体系(2026年9月までのパイロット期間)】

  • 10万トン未満:1万ドル(約151万円)
  • 10万トン〜30万トン:2万5,000ドル(約378万円)
  • 30万トン超:5万ドル(約755万円)

今回のパイロットプログラムでは、対象となるのは「検証済み炭素基準(VCS)」または「気候・地域・生物多様性(CCB)基準」との共同検証における、2回目以降の検証リクエストに限られる。初回検証のプロジェクトは対象外となる。なお、ベラのデジタルプロジェクト提出ツールを利用して提出されたリクエストについては、2026年3月まで自動的かつ無料で優先キューに追加される優遇措置が取られる。

ベラは、この新制度によって得られた資金を審査能力の増強に充て、優先キューを利用しない通常プロジェクトも含めた全体的な審査時間の短縮を目指すとしている。優先キューを利用しないリクエストは、既存のSLAに従って処理され、悪影響を受けることはないという。

ベラは2024年11月にリスクベースの審査アプローチを導入し、レビューサイクルを50〜80%短縮するなど、プロセス効率化を急ピッチで進めている。今回の有料オプションの導入は、オフテイク契約(長期購入契約)の期限遵守など、予見可能なスケジュールを求める開発者や購入企業のニーズに応えるものとなる。

参考:https://verra.org/verra-pilots-project-review-prioritization-process/