バハマ、海草藻場で「ブルーカーボン」収益化へ 政府系ファンドが初期資金の調達完了

村山 大翔

村山 大翔

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米投資会社のアートキャップ・ストラテジーズ(ArtCap Strategies)は11月24日、バハマの国家ブルーカーボン開発計画を主導するカーボン・マネジメント・リミテッド(Carbon Management Limited、以下CML)に対し、優先担保付き信用供与枠(シニア・セキュアード・ファシリティ)の組成と融資実行を完了したと発表した。この資金は、バハマ政府が設立した国富ファンド「カーボン・クレジット(SWF)リミテッド」の資本増強に充てられ、同国が保有する広大な海草藻場(シーグラス)を基盤とした炭素クレジット創出を加速させる。

今回の資金調達は、気候変動ファイナンス分野における画期的な事例となる。調達された資金は、バハマ・ブルーカーボン・プログラムの初期段階に必要なエコシステムのマッピング、科学的検証、および炭素ベースライン(基準線)の確立に投じられる。これにより、バハマ政府は「国が決定する貢献(NDC)」の第3版(NDC 3.0)の更新を支援するとともに、パリ協定第6条に基づく「国際的に移転される緩和成果(ITMO)」の発行に向けた基盤を整える狙いだ。

バハマは世界の既知の海草藻場の約41%を有していると推定されており、これらは年間で膨大な量の炭素を隔離・貯留する能力を持つ。同国は今後5年間で、これらの生態系の保全と回復に由来する高品質なブルーカーボン・クレジット(BCC)の販売を通じ、多額の収益を生み出すことを見込んでいる。

CMLのディレクター、アンソニー・ファーガソン氏は、「ブルーカーボン開発は単なる気候対策上の責務ではなく、バハマにとって世代を超えた機会である」と指摘した上で、「この融資枠を通じて、我々は自然資本を、国家開発や社会プログラム、気候レジリエンスのための持続可能な資金源へと転換していく」と述べた。

本プログラムによる収益は、バハマの気候変動対策や生物多様性保全の強化に加え、インフラ投資や社会開発プログラムにも還元される予定だ。これは、環境保全活動と国家の繁栄を直接結びつける新たな経済モデルとして注目される。また、バハマ政府は透明性の高いルールに基づく炭素枠組みへのコミットメントを表明しており、ブルーカーボン開発における世界的な先進国としての地位を確立しようとしている。

アートキャップ・ストラテジーズのマネージング・パートナー、アントニオ・ナバロ氏は、「この取引は、革新的な金融構造がいかにして民間資本をインパクトのある気候イニシアチブへと動員できるかを実証するものだ」と述べ、「バハマのプログラムは、自然資産を持続可能な国家開発資金へと転換する世界的な先例となる」と評価した。

参考:https://www.accessnewswire.com/newsroom/en/banking-and-financial-services/artcap-strategies-announces-closing-of-senior-secured-facility-to-ca-1106137#:~:text=The%20Bahamas%20Blue%20Carbon%20Program%20marks%20a%20defining%20milestone%20in,Director%20of%20Carbon%20Management%20Limited.