インドのマハーラーシュトラ州に拠点を置くアグロテック企業のアグロスター(AgroStar)は20日、気候変動対策に特化した投資会社であるジャスト・クライメート(Just Climate)らが主導するラウンドで、3,000万ドル(約46億円)の資金調達を実施したと発表した。同社は今回の資金を活用し、インド全土でAI(人工知能)を活用した農学指導と持続可能な農業資材の普及を加速させ、農業分野における温室効果ガス削減と土壌の炭素貯留能力の向上を図る。
自然由来の気候変動対策(NCS)への投資
今回の投資ラウンドを主導したジャスト・クライメートは、アル・ゴア元米副大統領らが設立したジェネレーション・インベストメント・マネジメント(Generation Investment Management)によって設立された投資会社である。特に、排出削減が困難なセクターや、自然由来の気候変動対策(NCS)への投資に重点を置いている。
本件は、ジャスト・クライメートのNCS戦略に基づくインドでの初の投資案件となる。従来のベンチャーキャピタルによる単なる農業効率化への投資とは異なり、明確な「炭素削減(カーボン・アベートメント)」と「土壌の健全化」を投資成果として求めている点が特徴だ。
化学肥料削減による脱炭素効果
アグロスターは、1,000万を超える農家に対し、デジタルプラットフォームと1万店以上の小売ネットワークを通じて、農学的な助言と農業資材を提供している。同社が注力しているのは、過度な化学肥料への依存からの脱却と、気候変動に対応した種子や生物製剤(バイオロジカル)の導入だ。
同社の2025年度(FY25)の実績によると、土壌の健全化と保水力の向上により、インド国内の農場で2,760億リットルの水を節約したほか、化学肥料の使用量削減によって12万トン(CO2換算)以上の温室効果ガス排出を回避したという。これは、農業セクターにおけるスコープ3(サプライチェーン排出量)削減や、将来的なカーボンクレジット創出の基盤となる重要な指標である。
経営陣と投資家のコメント
アグロスターの共同創業者兼CEOであるシャルドゥル・シェス(Shardul Sheth)氏は、今回の提携について次のように述べた。 「ジャスト・クライメートとの提携は、単なる資金提供以上の意味を持つ。彼らは自然気候ソリューション(NCS)の拡大に関する深い専門知識と、真のシステム変革を推進する企業を支援するという信念をもたらしてくれる」
また、ジャスト・クライメートのディレクターであるシッダース・シュリカン(Siddarth Shrikanth)氏は、インド農業への期待を次のように指摘した。 「インド農業は、気候・自然への作用という観点からも、人々の公正な移行(ジャスト・トランジション)を保証するという観点からも、我々の戦略における重要な優先事項だ。アグロスターがインド全土で事業を拡大し、炭素削減、節水、そして農家の生計向上という目標を達成できるよう支援していく」
今後の展望と市場背景
世界第2位の農業生産国であるインドだが、気候変動による降雨パターンの変化や、長年の化学肥料多用による土壌劣化が深刻化しており、収量の低迷が課題となっている。アグロスターは調達した資金を用い、オムニチャネルの拡大およびAI機能への投資を強化する方針だ。
農業分野における脱炭素化は、ボランタリーカーボン市場(VCM)においても注目度が高まっており、アグロスターのようなプラットフォーマーが農家の行動変容を促し、その削減量を定量化するモデルは、今後の農業カーボンクレジット市場の試金石となるだろう。
