EU、CO2除去認証枠組み「CRCF」運用へ実施規則を採択 「スキーム・ホッピング」防止など信頼性確保へ厳格化

村山 大翔

村山 大翔

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欧州委員会(European Commission)は、炭素除去(CDR)および炭素農業(CRCF)規則の運用に向けた最初の具体的措置として、実施規則(Implementation Regulation)を採択した。これは、2024年11月に欧州議会と理事が制定した「規則(EU)2024/3012」に基づくもので、EU域内における永続的なCDR、炭素農業、および製品中の炭素貯留に関する認証枠組みを実働させるための重要な一歩となる。

認証プロセスの透明性と不正防止を強化

今回採択された実施規則は、CRCF規則(規則(EU)2024/3012)を適用するにあたり、認証スキーム、認証機関、および監査に関する要件を規定している。これら3つの要素が調和して機能することを重視し、認証プロセスの信頼性を担保するとともに、不正リスクを最小限に抑えるための法的確実性を強化する狙いがある。

特に注目すべき点は、事業者が認証スキームを恣意的に変更する「スキーム・ホッピング」への対策が盛り込まれたことだ。これは、あるスキームで認証に失敗した事業者が、即座に別のスキームへ申請を行う行為を防ぐための規定である。事業者がCRCF以外の認証スキームに参加する可能性は残しつつも、EUの枠組み内での信頼性を損なう行為には厳格なルールが適用される。

また、実施規則では以下の要素が求められている。

  • 標準化された認証文書の作成
  • 高い完全性基準(High Integrity Standards)の遵守
  • 関連するステークホルダーへの義務的なパブリックコンサルテーション
  • 苦情処理や内部方針を含む文書管理の徹底

技術別メソドロジーの策定と今後のロードマップ

実施規則で示されたルールは包括的な基盤であり、今後、各認証スキームによって詳細が補完されることになる。欧州委員会は2026年初頭に認証スキームの公募を開始する予定であり、応募されたスキームは今回の実施規則の基準に照らして評価される。すべての要件を満たした認証スキームには、欧州委員会から5年間の認定が付与される。

さらに、具体的な炭素除去技術ごとの評価手法(メソドロジー)については、来年中に2つの委任法(Delegated Acts)が採択される見通しだ。これには以下の技術や手法が含まれる。

  • 工業的炭素除去
    直接空気回収・炭素貯留(DACCS)、生物起源炭素回収・貯留(BioCCS)、バイオ炭(Biochar)による除去など。
  • 炭素農業(カーボンファーミング)
    持続可能な農業、アグロフォレストリー(森林農法)、泥炭地の再湿潤化、植林など。

今回の決定により、EUは信頼性の高い炭素除去市場の構築に向けて規制環境の整備を着実に進めており、世界のボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の基準形成にも影響を与えることが予想される。

参考:https://climate.ec.europa.eu/eu-action/carbon-removals-and-carbon-farming_en