ナスダック調査報告「ネットゼロ達成にCDR不可欠」 企業の57%がカーボンクレジットに投資へ

村山 大翔

村山 大翔

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米ナスダック(Nasdaq)は、企業のカーボンクレジット購入担当者を対象とした年次調査報告書「2024 Global Net Zero Pulse」を発表した。同報告書によると、回答企業の57%が残存排出量を中和するために自然由来または技術由来の炭素除去(CDR)ソリューションへの投資を計画しており、カーボンクレジットを一切使用せずにネットゼロを達成できると見込んでいる企業は10%未満にとどまることが明らかになった。

大企業ほど「除去系」へシフト鮮明に

本調査は、過去1年間における耐久性のあるCDRクレジット市場の変化と、企業のネットゼロ戦略におけるクレジットの役割を分析したものだ。

調査結果によると、回答企業の93%がすでにカーボンクレジットに関する戦略を策定済みであると回答した。特筆すべきは企業規模による戦略の違いだ。大企業からの回答者はCDRクレジットに焦点を当てた戦略を支持する傾向にある一方、中小企業は依然として削減系カーボンクレジットまたは回避系カーボンクレジットに重点を置く傾向が見られた。

これは、ネットゼロ目標の達成に向け、単なる排出回避ではなく、大気中から二酸化炭素を物理的に除去する「CDR」の必要性が、資金力のある大企業を中心に認識され始めていることを示唆している。

規制圧力の高まりと品質への懸念

ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)におけるグリーンウォッシングへの批判が高まる中、購入企業はクレジットの評価により慎重になっている。

購入時の優先事項として、昨年の調査と同様に「測定・報告・検証(MRV)」「コスト」「永続性」が挙げられた。特に規制環境の変化が企業の調達戦略に大きな影響を与えており、回答者の72%が米証券取引委員会(SEC)の気候開示規則や、カリフォルニア州の気候関連開示法(AB-1305)といった政策群からの圧力を感じていると報告した。これまで規制が緩やかだった炭素除去分野だが、当局による監視の目がVCMにも及び始めている現状が浮き彫りとなった。

技術理解に偏り、海洋系CDRは認知不足

CDRの具体的な手法に対する企業の理解度にはばらつきが見られる。

植林(83%)、直接空気回収(DAC)(76%)、バイオ炭(63%)といった主要な除去手法については高い認知度が示された。一方で、海洋ベースのCDR手法については最も理解が進んでいないという結果が出ている。ナスダックは、VCMとCDRの導入を拡大させるためには、個別のCDR経路に関するさらなる企業教育が必要であると指摘した。

市場の不確実性は残るものの、企業がネットゼロ戦略の「不可欠なツール」としてCDRを位置づけ、規制対応を見据えた高品質なカーボンクレジット確保へと動き出している実態が確認された形だ。

参考:https://www.nasdaq.com/solutions/sustainability/resources/trends/global-net-zero-pulse-report/2024