炭素税排出量の5%のオフセット可能、シンガポールとマラウイが「パリ協定第6条」の実施協定へ

村山 大翔

村山 大翔

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シンガポール貿易産業省は11月20日、COP30の開催に合わせ、マラウイ共和国との間で、パリ協定第6条に基づくカーボンクレジットの協力に関する了解覚書(MOU)を締結した。このMOUは、両国が排出削減目標(NDC)の達成に向けて協調するための枠組みであり、特に第6条第2項に準拠した法的拘束力のある実施協定の締結を目指すことを明確にした。

この覚書により、シンガポール国内で炭素税の対象となる企業は、将来的に実施協定の下で認定されたプロジェクトからカーボンクレジットを購入し、課税対象の排出量最大5%をオフセットすることが可能になる。

「対応調整済みクレジット」の国際移転へ

今回のMOUは、両国がパリ協定の国際協力の枠組みである第6条を活用し、気候変動対策を加速させることを目的としている。第6条は、各国が排出削減プロジェクトから生じたカーボンクレジットを国際的に移転し、自国のNDC達成に役立てることを可能にする。これにより、重複計上を防ぐ堅牢な会計規則を通じて環境保全の完全性が確保される。

シンガポール側からは、サステナビリティ・環境大臣兼貿易関係担当大臣のグレース・フー(Grace Fu)氏、マラウイ側からは、天然資源・エネルギー・鉱業大臣のジーン・マタンガ(Jean Mathanga)博士が署名を行った。

両国は今後、MOUに基づき、第6条第2項(国家間の二国間協力)に沿った「対応調整済みカーボンクレジット」の国際移転のための二国間枠組みを定める法的拘束力のある実施協定の締結に向けて作業を進める。この実施協定には、移転の基準と手順が盛り込まれる予定である。

シンガポールはネットゼロ目標達成に向け連携を強化

この協力枠組みは、両国の気候変動目標達成を支援すると同時に、持続可能な開発の推進と環境の完全性の維持を目的とした、第6条に準拠した緩和プロジェクトを共同で特定していく。

シンガポールは2050年までに実質ゼロ排出(ネットゼロ・エミッション)の達成を目指しており、志を同じくするパートナーとの国際協力強化にコミットしている。今回のマラウイとのMOU締結は、シンガポールが締結した同種の覚書の中で最新のものである。

シンガポールは、カンボジア、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、フィジー、ケニア、ラオス、マレーシア、モンゴル、モロッコ、フィリピン、セネガル、スリランカ、ザンビアなど、すでに多数の国と類似のMOUを締結している。さらに、ブータン、チリ、ガーナを含む10カ国とは、法的拘束力のある実施協定への移行も進めている。

参考:https://www.mti.gov.sg/newsroom/singapore-and-malawi-sign-memorandum-of-understanding-to-collaborate-on-article-6-to-accelerate-climate-action/