「DAC技術」実証へ、テキサスで新拠点設立 Return CarbonとPEDLが連携

村山 大翔

村山 大翔

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カーボンクレジット市場の信頼性向上に直結する、実証済み炭素除去(CDR)技術の商業化加速を目指し、プロジェクト開発会社のReturn Carbonと非営利コンソーシアムのPermian Energy Development Lab(PEDL)が提携し、米テキサス州で新しい直接空気回収(DAC)技術の試験施設「トリニティ・キャンパス」を設立した。世界有数のエネルギー生産地域であるパーミアン盆地に位置する同施設は、初期段階で年間10,000トンのCO2回収・貯留を目指し、将来的な大規模展開に向けた重要な検証ハブとなる。

パーミアン盆地にDAC技術の「実証の場」

炭素市場における主要なプレーヤーであるリターン・カーボン(Return Carbon)は、パーミアン・エネルギー開発研究所(Permian Energy Development Lab, PEDL)と協力し、パーミアン盆地内、テキサス州ヨーカム郡のPEDL敷地内に「トリニティ・キャンパス」と名付けられたDACとCO2貯留のテスト施設を建設する。

この共同イニシアティブは、新世代のDAC技術を実世界の現場条件の下で検証することを目的としており、これによりCDRプロジェクトの信頼性(検証可能性)を高め、投資家やカーボンクレジット購入者の信頼獲得を加速する。

段階的拡大戦略で大規模商業化を促進

トリニティ・キャンパスは、地域で長年エネルギー生産を行ってきたRoosevelt Resources(ルーズベルト・リソース)とのパートナーシップを通じて実現した。初期運用フェーズでは、年間約10,000トンのCO2回収と貯留を目指す。

さらに、この施設は段階的な開発アプローチを採用しており、フェーズ1で得られた知見を統合することで、第2フェーズでは年間100,000トンから500,000トンのCO2回収能力を持つ商業規模の施設へのスムーズな拡大を想定している。

リターンのマネージングディレクターであるマルティン・ヴェルヴォールド氏は、「トリニティ・キャンパスは、次世代の炭素回収技術が現場で真価を証明する場だ。市場はコンセプトから商業的実績へと移行しており、テキサスの気候とパーミアン盆地の組み合わせは、どの技術が真に拡張可能であるかを検証するための完璧な基盤を提供する。これこそが、測定可能な真の影響を加速する方法だ」と述べた。

統合エネルギーシステム(PIES)の中核に

施設の運営を支援するため、PEDLはRoosevelt Resourcesと協力し、電力供給や試験規模の水処理システムの統合などを探求している。PEDLは2023年に設立された非営利コンソーシアムであり、パーミアン盆地のエネルギー、労働力、経済開発におけるイノベーション加速に焦点を当てている。

PEDLの主導的イニシアティブであるPermian Integrated Energy System(パーミアン統合エネルギーシステム、PIES)は、再生可能エネルギー、CO2除去、水の再利用などを統合したシステムであり、スケーラブルで再現性のあるエネルギーインフラのモデルとして構想されている。

また、Roosevelt Resourcesは、革新的なEnhanced Oil Recovery(原油増進回収、EOR)と炭素隔離プロジェクトを進めており、これが回収されたCO2の初期貯留経路となる見込みだ。これにより、DACによる大気からのCO2除去と、地中への恒久的な貯留が一体となって推進されることになる。

参考:https://returncarbon.nl/news/news-nov-2025