トランプ大統領の石油・ガス掘削の削権拡大を受け、CO2除去推進のカリフォルニア州と激突へ

村山 大翔

村山 大翔

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米国トランプ政権がカリフォルニア州を含む米領海での石油・ガス掘削権の劇的な拡大計画を打ち出したことで、炭素排出量削減と排出量取引(ETS)を主導する同州との間で、気候変動政策を巡る新たな対立が勃発した。内務省(United States Department of the Interior)が11月20日に発表したこの提案は、「エネルギー支配(energy-dominance)」を掲げるトランプ政権の化石燃料生産最大化路線と完全に一致しており、大規模な「炭素除去(CDR)」技術への投資を進める民主党のギャビン・ニューサム知事率いるカリフォルニア州政府は、この動きに強く反対姿勢を示しているとロイター通信が報じている。

トランプ政権の提案は、沿岸の石油・ガス掘削権の競売を抑制していたバイデン政権時代のスケジュールを置き換えるもので、カリフォルニア州の「世界的に有名な海岸線」を含む米領海での開発を大幅に拡大する内容だ。この計画に対し、石油業界団体は歓迎の意を表明している一方で、環境保護団体は潜在的な環境破壊の影響を批判している。

特にカリフォルニア州は、カナダのケベック州と連携した北米最大の排出量取引制度(ETS)を運営しており、2045年までの温室効果ガス排出実質ゼロを目指す中で、州独自の排出枠取引の収益を再生可能エネルギーや脱炭素化投資に充てる「キャップ・アンド・インベスト」プログラムを拡充し、気候変動対策と経済成長の両立を図っている。

同州は、排出量取引制度を通じて、企業の排出削減努力を促す一方、炭素回収・貯留(CCS)や直接空気回収(DAC)といったCDR技術への投資を強化し、カーボンニュートラル達成への移行期における排出枠(カーボンクレジット)の役割を重視している。このため、連邦政府による化石燃料生産の拡大は、州が設定した排出削減目標の達成を困難にし、結果的に州内の排出枠価格の変動リスクを高める可能性がある。ニューサム知事は、連邦政府のエネルギー政策を強く批判しており、今回の計画も同州の独自で進める気候変動対策と真っ向から衝突する構図となる。

この連邦政府による掘削権拡大計画の実施には、法的手続きや州の反対運動が絡むため時間を要する見通しだが、最終的な決定は今後の議会審議や裁判所の判断に委ねられる。カリフォルニア州が、この新たな化石燃料計画に対して、州の環境法や排出量取引制度をどのように活用して対抗措置をとるのかが、今後の焦点となる。

参考:https://www.reuters.com/business/energy/us-offshore-drilling-proposal-includes-auctions-off-california-coast-2025-11-20/