カーボンクレジットの地産地消、 コスモとGreen Carbon、「中干しクレジット」で地域循環型脱炭素モデル実現へ

村山 大翔

村山 大翔

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ネイチャーベースのカーボンクレジット創出・販売事業を展開するGreen Carbon(グリーンカーボン)は、コスモエネルギーホールディングスのグループ会社であるコスモ石油マーケティングと連携し、福島県会津エリアにおける「地産地消」型の地域循環型オフセットモデルを推進している。Green Carbonは、同エリアで創出された稲作由来の中干しクレジットを活用し、コスモの特約店が所有するタンクローリー車の燃料由来CO2排出をオフセットした。これは、地域内で創出されたカーボンクレジットを地域内の企業が活用し、燃料油の排出を相殺する国内初の事例となる。

地域内バリューチェーンでGHGを削減

今回の実証は、Green Carbonが主導する「稲作コンソーシアム」の枠組みのもと、コスモ石油マーケティングの会津イノベーションオフィスが農家と協働して中干し期間の延長などの脱炭素型営農を普及させることで実現した。中干しクレジットの算定・登録・販売はGreen Carbonが一貫してサポートし、創出されたクレジットの一部を、コスモの特約店である北日本エネルギー株式会社の会津直売課が保有するタンクローリー車の燃料由来CO2排出オフセットに活用している。

この取り組みにより、同直売課の陸上運送部門から発生するCO2排出量の約100%が削減される見込みだ。さらに、カーボンクレジット取引金額の一部は、中干しの実施に協力した地域農家へ還元され、地域経済の活性化にも寄与する。これは「地域で温室効果ガス(GHG)を削減→地域企業の排出をカーボンオフセット→収益が地域農家に戻る」という、地域内で価値が循環する脱炭素モデル(地域循環型オフセットモデル)の実現を意味している。

稲作コンソーシアム、農家の手間を削減し収益化を支援

Green Carbonが2023年4月に発足させた稲作コンソーシアムは、企業・自治体・農家が一体となり、農業由来のカーボンクレジットを創出し、その価値を地域に還元するオープン・プラットフォームである。

このコンソーシアムでは、参加農家の水田情報を集約し、J-クレジット制度への申請手続きをまとめて行うため、農家の手間と初期費用を大幅に削減できる。参加農家は、中干し期間の延長などの環境保全活動(メタン排出削減)を行うことで、カーボンクレジットによる副収入を得ることが可能だ。メタンはCO2の約25倍の温室効果があるとされており、中干し期間延長は水田由来のメタン排出を抑えるための重要な取り組みとして、農業分野の排出削減手法として注目されている。

「地産地消」モデルで地方創生へ

Green Carbonは、J-クレジット制度に基づく中干しクレジットの算定・登録支援を進め、企業が自社排出のオフセットに活用できる形で普及を推進している。

今回の福島県会津エリアでの事例を皮切りに、地域で生まれたクレジットを地域内で活用する「地産地消」モデルを通じて、企業の脱炭素化(コーポレートPPAのクレジット版とも言える)と地方創生を両立する新たな仕組みづくりを進めていくとしている。このモデルは、今後、国内の他の地域における農業由来クレジットの創出と活用を促進する上で、重要なベンチマークとなることが期待される。

参考:https://green-carbon.co.jp/jpcollaborating-with-cosmo-oil-marketing/