東京の中小企業「脱炭素マネタイズ」加速、「プログラム型J-クレジット」運営事業者に最大5,600万円の支援

村山 大翔

村山 大翔

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東京都は2025年11月19日、「プログラム型プロジェクトを活用したカーボンクレジット創出支援事業」における採択事業者を決定した。この事業は、個々の排出削減量が小さい都内の中小企業(SME)による多様な脱炭素活動をJ-クレジットとして束ね、クレジット取引を活性化させるとともに、排出削減活動の参加者への利益還元を目指すもので、採択事業者には最大で総額5,600万円(約38万ドル)の成果連動型協定金が支払われる。

プログラム型プロジェクトは、複数の中小企業による小さな排出削減・吸収活動をまとめてカーボンクレジット化できるスキームであり、個社での取り組みよりも容易にカーボンクレジットを創出可能とする。東京都は、都内の中小企業との幅広いネットワークを持つ経済団体や金融機関などと連携し、このプログラム運営を支援する。

今回採択された事業者は、Carbon EX、クレアトゥラ、バイウィル、そしてフェイガーの4社である。採択プロジェクトの内容は、エネルギー効率化から再生可能エネルギー導入、さらには炭素除去(CDR)要素を含む先進的な農地施用活動まで多岐にわたる。

バイオ炭施用を含む「炭素除去プロジェクト」も採択

採択事業者の中で、フェイガーは特に炭素除去(CDR)技術に関わる「バイオ炭の農地施用による炭素貯留(AG-004)」を排出削減活動の一つとして計画に組み込んでいる。同社は他にも、水稲栽培の中干し期間延長によるメタン排出削減(AG-005)にも取り組み、農業分野での温室効果ガス削減と炭素吸収の両輪でカーボンクレジット創出を目指す。これは、地方自治体が主導するJ-クレジット創出支援事業において、CDR技術を直接的に支援する重要な事例となる。

他の採択事業者が取り組むのは、高効率ボイラーや空調設備の導入によるエネルギー効率化、太陽光発電設備やLED照明の導入など、主にエネルギー起源CO2削減に焦点を当てた活動である。各事業者は、都内中小企業に対し、排出削減の成果に応じた利益の還元を目的としており、ボトムアップでの脱炭素化と経済的インセンティブの連動を促す。

3年間にわたり最大5,600万円の成果連動型支援

本事業は2025年度から2027年度までの3か年度にわたって実施される。東京都は、採択プロジェクトに対し、2025年度に最大1,600万円、続く2026年度および2027年度にはカーボンクレジット創出量に応じた成果連動型で最大2,000万円を協定金として支払う。

採択されたプロジェクトは、2028年1月までにJ-クレジットの認証を最低1回以上取得することを目指す。この取り組みは、「2050東京戦略」における「GXの実現を支える基盤づくり」を推進するもので、東京のボランタリーカーボンクレジット市場の流動性向上に寄与することが期待されている。

参考:https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/11/2025111908