8月5日、ロイター通信は、世界各地の60以上のカーボンプロジェクトを代表する団体「Project Developer Forum(PDF)」が、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の苦情処理制度の大幅な見直しを求めたと報じ、PDFも公式SNSで記事を引用し事実とした。現行制度は正当なプロジェクトの信用を傷つけ、必要な気候対策資金を遅らせていると警告している。PDFは米国の主要レジストリVerraに、匿名で安全に通報できる仕組みの導入を要望している。
ボランタリーカーボンクレジット市場は、環境団体などから「質の低いジャンククレジットが多く、企業のグリーンウォッシュを助けている」との批判を受けている。
PDFによると、現在の苦情処理制度では、開発者が説明する前にプロジェクトが公に停止されるケースが多く、公平性を欠いているという。議長のニック・マーシャル氏は「誠実さは絶対条件だが、告発の取り上げ方や対応方法も同じくらい重要だ」と述べた。
また、悪質な一部事例が業界全体の評判を損なっている一方で、不正を知る関係者が告発をためらう背景には、内部告発者の保護が不十分なことがあると指摘した。PDFはこの問題に対応するため、Verraの公式サイトに匿名で安全に通報できる窓口を設けるよう求めている。
Verraはロイターに対し、2024年初めから強化した苦情処理プロセスを導入しており、PDFの懸念にも対応していると説明した。しかし、昨年の中国での稲作プロジェクト37件の登録拒否など、高品質基準による案件却下が相次ぎ、業界内では緊張が高まっている。
開発者側は、説明責任の確保は必要だとしながらも、今のやり方では投資や協力関係が阻害され、環境対策の進展を妨げていると懸念している。特に、気候資金への依存度が高い地域のプロジェクトでは影響が大きく、制度改正の行方が今後の資金流入に大きく関わる可能性がある。