英国政府は8月5日、廃木材を燃料に低炭素発電を行うエヴェロ(Evero)を、同国初のバイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)」施設の事業者に選び、交渉を開始すると発表した。この計画では、イングランド北西部インセ村にあるエヴェロの既存バイオマス発電所に、三菱重工業のCO2回収技術を導入し、2030年のネットゼロ目標に向けて温室効果ガスを削減する。
新プロジェクト「インベックス(InBECCS)」は、エネルギー安全保障・ネットゼロ省が選んだ重点2案件の1つ。
毎年17万トンの廃棄木材(古いキッチンや製造過程で出る木くずなど)を再利用し、埋立処分を防ぐことで循環型経済にも貢献する。さらに、大気中から年間21万7,000トンのCO2を除去する予定で、これが実現すればカーボンクレジット市場でも価値を持つ可能性が高い。
施設は、北ウェールズと北西イングランドを結ぶ「ハイネット・クラスター(HyNet)」のCO2輸送・貯留ネットワークに接続。回収したCO2を効率的に地中貯留でき、英国が整備したCCUSインフラを最大限活用する。
発電規模は変わらず、エヴェロ全体で毎年10万世帯以上に電力を供給できる見込みだ。
事業開始に向けて約800人の新規雇用を創出し、HyNet全体では雇用効果は2,800人に達する。
エヴェロCEOのエリオット・レントン氏は「BECCSを実用化し、CO2除去とクリーンエネルギー供給を同時に進める第一歩だ」と語った。
産業大臣サラ・ジョーンズ氏も「この事業は地域経済の再生と雇用、エネルギー安全保障、環境保護を一度に実現する」と強調した。
BECCSは、バイオマスを燃やして得たエネルギーの排出CO2を回収・貯留し、実質的にマイナス排出を実現する技術。国際的にも2050年のカーボンニュートラルに不可欠とされ、今回のインベックスは英国のモデルケースとして注目されている。