ネパール、「森林カーボンクレジット」で初の成果報酬 世界銀行FCPFから約14億円支払い

村山 大翔

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ネパール政府は11月14日、世界銀行が運営する森林炭素パートナーシップ基金(Forest Carbon Partnership Facility=FCPF)から、森林減少と劣化による排出削減の成果として940万ドル(約14億8,000万円)の支払いを受けた。対象は国南部のタライ・アーク地域で実施された「REDD+排出削減プログラム」による約188万トンの二酸化炭素(CO2)削減分で、FCPFの排出削減支払い契約(ERPA)に基づく初回の成果報酬となる。

この支払いは、ネパールが森林減少防止と持続可能な森林経営を推進する上で大きな節目を示すものだ。FCPFの同国プログラムは、地域住民と先住民族、民間団体が連携する「コミュニティ主導型森林管理」を中核に据える点が特徴で、生物多様性が豊かで人口密度も高いタライ・アーク地域において、森林保全と地域の生計向上を両立させる取り組みとして注目されている。

世界銀行南アジア地域(モルディブ・ネパール・スリランカ)担当ディレクターのデービッド・シスレン氏は、「今回の支払いは、ネパールが森林減少の抑制、森林ガバナンスの強化、生物多様性の保全、地域生計の持続的拡大で成果を上げた証だ」と述べた。

支払金は、政府と地域コミュニティ、関係団体の協議を経て策定された「便益共有計画(Benefit Sharing Plan)」に基づき分配される。同計画では、森林依存型の住民や先住民族が努力の成果を直接享受できる仕組みを設けており、資金は森林再生、地域企業の育成、気候レジリエントな生計手段の支援などに充てられる見通しだ。

ネパール森林環境省のラジェンドラ・プラサド・ミシュラ事務次官は、「この成果報酬は、森林依存コミュニティや先住民族、政府の協働による努力の結実である。ネパールは今後も包摂的かつ地域主導型の森林管理を通じて気候行動を前進させる」と述べた。

FCPFは、各国政府、市民社会、先住民族、民間セクターを結集し、森林減少・劣化による排出削減と持続的森林経営の推進を支援する国際的な枠組みである。2025年11月時点で、参加国による累計排出削減量は1億3,100万トン超に達し、そのうち6,370万トン分がクレジット発行され、4,650万トン分(支払額2億3,200万ドル=約365億円)が成果報酬として支払われている。透明性と包摂性を重視するFCPFの活動は、途上国の森林・気候対策モデルとして定着しつつある。

参考:https://www.worldbank.org/en/news/press-release/2025/11/16/nepal-receives-9-4-million-for-forest-carbon-credits-under-the-forest-carbon-partnership-facility