COP30で全球メタン報告書が公表 「削減は前進」も技術導入の遅れが焦点 CDRとカーボンクレジット市場に波及

村山 大翔

村山 大翔

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国連環境計画(UNEP)と気候・クリーン空気連合(CCAC)は11月17日、ブラジルで開催中のCOP30で最新の「全球メタン状況報告書」を公表した。各国が2021年に「グローバル・メタン・プレッジ」を掲げてから4年が経ち、法規制の強化により2030年の排出見通しは下方修正されたが、削減速度は依然として目標に届いていない。報告書は、排出削減策の大半が低コストで実行可能であるにもかかわらず、導入が追いついていない現状を示した。

報告書によると、各国が2025年半ばまでに提出した行動計画を合算すると、2030年のメタン排出量は2020年比で8%減にとどまる。目標とする30%削減に向けては、油ガス施設の漏洩修復、放棄井の封鎖、水田管理の改善、有機廃棄物の分別と処理など、既に実証済みの対策を大規模に展開する必要がある。

カナダ環境・気候変動相でグローバル・メタン・プレッジ共同議長のジュリー・ダブルスン氏は「この報告書は、我々の進捗を測る基準であり、何をすべきかを明確に示す指標だ。削減は進んでいるが、より速く、より深い行動が不可欠だ」と述べた。

各国閣僚は、測定・報告・検証(MRV)の強化と財源拡大を求め、特にG20プラス諸国が世界の削減余地の約72%を占めるとの分析に注目した。対策を早期実施すれば、メタンが短寿命である特性から、気温上昇の抑制効果が比較的短期間で現れると指摘されている。

UNEPのインガー・アンデルセン事務局長は「メタン削減は気候安定化だけでなく、大気汚染の抑制や農作物保護にもつながり、多数の命を救う」と強調した。

メタン削減は排出権市場でも重要性が増しており、廃棄物処理、農業、水田管理、油ガス分野での漏洩削減は、高品質カーボンクレジットの主要供給源として注目されている。各国が行動計画を実施する過程で、国際カーボンクレジット市場向けのMRV整備が進むかが、今後の焦点となる。

参考:https://www.unep.org/resources/report/global-methane-status-report-2025