11月17日、米CDR情報基盤を運営するCDR.fyiとクライメート投資支援団体プラネット2050(Planet2050)が、耐久型炭素除去(CDR)開発企業を対象とした共同調査「カーボン・ファイナンス・パルス調査」の結果を公表した。調査は、世界の耐久CDR開発が直面する最大の障害である資金調達の実態と課題を明らかにする目的で実施されたもので、6カ月以内の資金確保競争や1〜5百万ドル(約1億6,000万〜8億円)規模の「ミドルレイヤー投資家」不在など、産業構造を左右する複数の深刻なギャップが浮き彫りとなった。
今回の調査は、CDR.fyiの登録ユーザーと、Planet2050が実施する耐久CDR調達プログラム「パーマネントCDR RFP」の参加企業を対象に、開発者・サプライヤーのみが匿名で回答する形で行われた。調査結果は、耐久CDRの成長を阻む資金面の構造的課題を体系的に整理し、どの段階で遅延が生じ、どの主体がどの種類の資金を必要としているかを示した。
最も顕著な傾向として、回答企業の多くが「今後6カ月以内に資金調達を必要とする」と答え、短期的な資金確保の競争が激化している実態が明らかになった。複数の企業は、この資金を事業継続と人員維持のために投入すると回答した。
資金源については、助成金や補助金への依存が際立つ。近年は各国政府で制度見直しや減額も進むが、それでも依然として最も需要の高い資金源となっている。調査は、助成金中心の戦略が「必要な速度では利用できない資金」に依存するリスクをはらんでいると指摘した。
一方で、耐久CDR開発の進捗は時間軸が長く、初期投資が大きく、将来収益も不確実である。このため、従来型のデットファイナンスやベンチャー投資とは相性が悪い構造的問題がある。特定のニーズに対応した革新的な金融スキームも台頭しつつあるが、いまだ事例は少ない。
さらに、1〜5百万ドル(約1億6,000万〜8億円)の資金を供給する「ミドルレイヤー投資家」の不足も深刻だ。調査は、この層の不在が、概念実証を終えてスケール段階へ移行するプロジェクトの停滞を招いていると指摘した。
報告書は、資金決定が遅れ始めるタイミングや、どの開発ステージが遅延に最も脆弱かなど、外部からは把握しにくい構造的パターンも可視化した。市場全体では信認が強まる領域がある一方、依然としてボトルネックが集中する部分も明確になった。これらは、今後数年の耐久CDR市場の方向性を左右する早期シグナルとして注目される。
調査結果は、開発企業だけでなく、投資家、オフテイカー、政策担当者が活用できる実務的示唆を含む形で無料公開されており、政策設計から購入戦略まで幅広い意思決定を支える材料となる。各国政府が市場拡大に向けた制度設計を進める中、調査で示された「構造的な資金ギャップ」が、次の施策議論の焦点となる可能性がある。
参考:https://planet2050.earth/cdr-finance-report
