AIデータセンターによるCO2排出増加で「カーボンクレジット需要」が逼迫 マイクロソフト主導で価格4倍に高騰

村山 大翔

村山 大翔

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人工知能(AI)の開発・運用に伴う温室効果ガス(GHG)排出をオフセットするため、マイクロソフト(Microsoft)やグーグル(Google)などの米IT大手がカーボンクレジット、とりわけCDRクレジットを大量購入している。高品質CDRクレジットの需要急増により、2024年時点で価格は森林保全型クレジットの約4倍に達し、市場全体で供給不足が生じているとロイターが報じた。専門家は「この逼迫こそが新規投資を呼び込む健全な兆候」と分析している。

ブラジル北部ベレンで開かれた国際会議の報告によると、炭素除去(CDR)技術を用いたクレジットの需要が急拡大している。背景には、生成AIをはじめとするデータセンターの電力消費増加があり、企業は自社のScope1,2,3排出を補うため、質の高い除去型クレジットを優先的に購入している。

マイクロソフトとグーグルは過去2年間で市場の主要買い手となり、炭酸カルシウムを用いた大気中二酸化炭素(CO2)吸収技術を持つ米ヒーアローム・カーボン(Heirloom Carbon)などから調達を進めている。こうした動きにより、除去型クレジットの取引価格は2024年に1トン当たり数百ドル台に上昇し、森林保全型や再植林型などの従来型クレジットの約4倍に達した。

ヒーアロームの米カリフォルニア州トレーシー新工場では、処理した石灰石を用いて大気中CO2を直接吸収する装置が稼働しており、炭素除去の実証段階から商業化への転換が進んでいる。市場関係者は「IT業界による初期需要が、技術革新とコスト低下を促す可能性がある」と指摘する。

一方で、供給不足が長期化すれば、他産業によるカーボンニュートラル戦略の実行に支障を来す懸念もある。世界的なCDR市場の拡大には、認証制度の整備と透明な価格形成が不可欠とみられる。

次の焦点は、2026年に予定される主要IT企業の排出削減目標更新であり、AI由来排出の「実質ゼロ化」実現に向け、どの程度CDR技術が組み込まれるかが注目される。

参考:https://www.reuters.com/sustainability/cop/big-tech-led-demand-carbon-removal-credits-fuels-supply-crunch-2025-11-18/